紅梅は緑風に乗って香る−2
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春麗は朝のうちに礼部に寄って、魯官吏に来年の国試の素案と、進士教育の案を提出して打ち合わせた。
「概ねいいと思います。ただ、吏部が協力してくれるかがキモになってくると思いますが」
「そこはわたくし、説得致します。今回、冗官処分でも覆面吏部官は動くことですし、除目前の定期的な動き以外にも、緊張感が生まれていいと思います。各部の尚書か侍郎からの査定もあった方がいいですよね?」
「そこは問題ないでしょうね、自分のところに欲しい人材について、よく見るでしょうし、侍郎不在のところは尚書に見てもらう、ということで進めましょう」
「あと、女人国試についてですけれど、基本的な特別待遇は不要だと思いますが、念のための護衛を…兵部・羽林軍への説明はわたくしが行いますが、魯尚書にも同席をお願いします」
魯尚書は頷いた
「あともう一つ、厠の問題が…見張りは護衛の武官に頼ることになりますが、どこか一つ、近場を女人専用にした方が安全面でもよろしいかと思います」
「会試までどのぐらいくるかわからないが、よからぬことを考える輩もいないとも限らないから、そうしよう。今でも、二人は苦労しているのだろうな」
春麗はクスクス笑って答えた
「そうでもありませんわ。府庫と後宮を使ってます。でも、わたくしたちが特殊なんでしょうね。もちろん、次の人たちが来た時にも同様に使えるようにはするつもりですが、どこか宮城内に一つ変えてもらう必要があるかもしれませんね…10人超えてきたら、空き部屋に仮眠室も作りたいと思います。これは工部と相談でしょうかね?」
「基本的なことは法案で決めてきたが、実際に入ってくると細々とした問題が出てくるから、やはりあなたに頼んでよかったよ」
「そう言っていただけると、わたくしもやりがいがありますわ」
満足げに互いに頷き、話はあっさりと終わった。
礼部から歩いて戸部のそばまで来たときに、一人の官吏とすれ違う。
少し手前で礼を取られたので、顔も佩玉も見ずに条件反射で礼を返した。
すれ違いざまに、ふとここ2日ほど、朝に感じていた気配と同じと悟る。
立ち止まってじっと見たら、年齢と風貌に少し合わない銀の腕輪が目に入った。
(確か…)
瞬間的に頭を回転させる。
全ての官吏、とは言わないが、吏部尚書補佐の合間に読んでいた貴族録を思い出す。
(黎深叔父様に確認した貴族の中に陸家の方がいらしたわよね…叔父様が、わたくしと歳が近いと仰っていて、確か、銀の腕輪をしていると…)
一瞬、声を掛けるか迷ったが、そのときに前から歩いてきた景侍郎に「お帰りなさい」と声をかけられて、時期を逃した。
(もう少し様子をみてもいいかもしれない…けど…)
「ただいま戻りました」と答えながら、柚梨と一緒に戸部に入った。