紅梅は緑風に乗って香る−2
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「現在冗官の位にある官吏の、一斉退官及び処分を、提案いたします」
門下省長官・旺季の提案を、吏部尚書室で黎深から受けた絳攸と春麗は絶句した。
「悠舜が帰ってきて、良かったな。悠舜が猶予をくれたお陰で文字通り秀麗のクビが皮一枚で繋がった。お前とハナタレ王の掘った浅はかな穴を埋めてくれたぞ」
「確かに…冗官にまで落とせば秀麗への風当たりも当分弱まるようには見えるけれど、百戦錬磨のベテラン官吏を相手に気を抜いたのは失敗でしたわね…」
「春麗の言う通りだ。百歩先を考えろと言ってあるだろう。目先のことだけ見ているから足元を掬われるんだ。甘い」
絳攸は返す言葉もなかった。
「…こうなることがわかっていたなら、どうしてー黎深様も、春麗も」
「大馬鹿者。どうして私がハナタレ小僧のために何かしてやらなくちゃならん。いいか、何度も言ってあるはずだ。私は王にも政事にも全く興味はない。むしろ嫌いだ。利用することはあっても、助けてやる気などサラサラない。昔も今もな。兄上や春麗や秀麗のことがなければ、今回もざまーみろと鼻で笑いたいぐらいだ」
「紅一族の宗主である黎深叔父様の言葉は、ある意味そのまま紅一族の姿勢でもありますわ。ザマーミロとは言いませんけれど、冷静に政事の動きと国情を見極め、決して深入りしない。退くときは退く。だからこそ紅藍両家…だけでなく、彩八家は残っているともいえますわね」
黎深は春麗の言葉に黙って頷いた。
そして絳攸を見る。
その視線を追うようにして春麗も絳攸を見た。
(絳攸兄様、ようやく花菖蒲を受け取ってしまったことの意味を理解し始めたかしら…)
「さあ、余計なことを考えていないで、とっとと仕事しろ。言っとくが、秀麗の方がはるかに瀬戸際に立っているということをわかってるのか?しかも秀麗に解雇寸前通告を出すのは私とお前の仕事なんだ。どこかの抜けさく王のせいでな。お前はしばらく吏部で仕事だ。春麗、この件は少し手伝って欲しい」
「かしこまりました」
絳攸が室を出て行ってから、いつものようにお茶を淹れる。
「それで、わたくしがお手伝いする仕事とは?」
「そのうち、覆面から報告が上がってくる。その確認だ」
「わかりましたわ。でも、叔父様の判断が間違いなく正しいと思いますけれど?」
「こういう仕事もある、と知っておいて損はない。今回は一つ仕掛けるからな、それを見ておいてもらいたい」
「かしこまりました。それにしても…わたくしは叔父様に甘やかしていただいてばかりですわね、昔も、今も」
ちょっとだけ遠い目をして微笑むと、黎深は「ふん、当たり前だ」と満足げに頷いた。