紅梅は緑風に乗って香る−2
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「姉に会ったのか!?」
翌日の朝、珀明に報告するとすごい勢いで詰め寄ってきた。
「えぇ…なかなか勢いのある…お姉様ね。あの方が…と思うと不思議なところもあるけれど、芸術家だったり何か一つのことに秀でている方って、一般によく言う他のことができなかったり、凡人とは考えが異なる、とよくいうのを象徴されているような気もしたわ」
「…す、すまん…まさかこんなことで碧幽谷の正体がバレることになるとは思っていなくて…秀麗だけでなく春麗も関わることになるとは…」
朝からがっくりと肩を落として珀明は立ち止まった。
ここ数日の騒動を思い出すだけで寿命が縮む。
「秀麗?」
キョトン、と春麗が尋ねる。
「お前、聞いていなかったのか?初めに碧幽谷の贋作がでまわったんだ。で、それと並行して贋金が出回っていて、馴染みの妓楼の関係で、両方の調査を調査を秀麗がしていたみたいだ。と言っても俺は贋作のことを途中で工部の欧陽侍郎と義兄から聞いて贋作の方だけしか把握していなかったんだが、絳攸様と主上に呼び出されてことの顛末は後で聞いた…」
「そう…」
(この前、秀麗が黙っていたのは贋金のことだったのかしらね?戸部の管轄なんだから知らせてくれてもいいのに…)
少し考え込んでからゆるゆると首を振って余計な考えを追い出してから、続けた。
「贋作かぁ…でも、碧幽谷殿ほどの贋作って、相当な腕の持ち主、ってことになるわよね」
「あぁ、”余程の目利き”でない限り、見抜けないぐらいの作品だったな」
「珀明さんもご覧になったのですね。でも”顛末”ってことは、解決はしたのかしら?」
「あ、あぁ…もう新しいものは出ないだろう…」
珀明は全て言うわけにもいかず、歯切れ悪く答えた。
なんとなく気になったが、この話題は続けない方が良さそうだと判断した春麗は、話を変える。
「ところで、ちょっと教えていただきたいことがあったのだけれど…覆面吏部官って各部署にいるのよね?」
「あぁ、そうだが…俺も誰が、というところまでは把握しきれていないなが、それがどうかしたか?」
「今、来年の国試のやり方を考えているの。わたくしたちの時や絳攸兄様、黄尚書たちの時って、朝廷預かりで魯尚書が教育担当だったじゃない?それ以外の年は普通に吏部試があるんだけれど、各部を順番に研修してもらって、それを吏部試の代わりにできないかしら、と思ったの」
「あぁ、それはいいかもしれないな。俺たちの時のやり方は、賄賂や不正が通りやすいし、かといって全て礼部で見るのも負担が大きすぎるからな。また無駄に人数が増えると去年みたいなことになりかねない」
珀明は納得した顔で頷いた。
「ありがとう、珀明さん。魯尚書にお話しして、了解がいただけたら吏部に正式に話をするわ。もっとも、いくつか考えていることがあって、他にも詰めることが多いから、もっと先になると思うけれど」
いくつか考えていることを口にしようとしたが、ふっと気配を感じて立ち止まる。
(・・・・・)
話の内容は聞こえないだろう距離にいる。
そして攻撃してくる様子はない、だがしかし紅家の”影”とは違うこちらを伺う気配。
とりあえずのところは気づかないふりをして、「どうしたんだ?」と声をかけてくる珀明に「なんでもないわ」と歩き出した。