はじまりの風−3
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(こっちを通った方が近道、っと)
と人気のない回廊を歩いていたら、「絳攸、君を連れていくのは私の役目だからね」という声が聞こえてきた。
この角を曲がった先に、きっといる…
鉢合わせしたくない、と思い、背中を向けて元歩いたところをゆっくりと歩いてやり過ごそうとしたが、そのときに「李絳攸様、藍楸瑛様」と呼び止められる声も聞こえたので、足を止めた。
「主上からーお二方へ、と言づかって参りました」
「おやおや…これは参ったね。ーまさかこうくるとはねぇ」
「しかし普通、生花で渡すかい。随分大雑把だね」
「…その、主上が急ぎゆえ、そこから適当に摘んでいけ、と」
(生花?…まさか!)
春麗は息をつめる。
「君はどうするんだい?」
(ということは、藍将軍は受け取った、と)
「はぁ。ー主上に、承りました、と伝えてくれ」
(絳攸兄様の馬鹿〜〜〜!!!)
なんで、受け取ってしまうのよ…
このまま顔を合わせたら”天寿”として冷静でいられる気がしなくて、そのまま足を進めて、結局元きた道を返して遠回りすることにした。
(藍将軍はともかく、なんで絳攸兄様が花を受け取っちゃったのよ…)
怒りともモヤモヤとも言えない複雑な気持ちを落ち着けるべく、戸部の仕事が終わった後、今日も宋太傅と勝負しようと三師の室にいく。
聞こえてきた声は霄太師と茶太保のものだった
「…茶の…八年前の王位争いの時を覚えておるか?」
「忘れられるわけがなかろう」
四人の公子を擁立した彩七家の権力争い。
国を割り、人心の乱れる原因となった。
「あの時、紅藍両家だけが争いに加わらなかったとされているな」
(そうなんだ…)
春麗はその時は宮城を離れていたので詳しいことは入ってきていなかった。
毎日の生活がいっぱいいっぱいで、そんなことを考える余裕もなかった。
ちらりと隙間から覗いてみると、茶太保の声がした。
「皮肉か、それは」
「茶家はお前が先王のもとで立てた功績のおかげで今の権を守られた。褒めておるのよ」
茶太保は大きくため息をつく
「残念ながらどこの家にもどーしようもない愚かなものはいるものだ」
「そういえば清苑公子も頭の悪い外祖父のとばっちりを受けて流罪にされたか。切ないのう」
霄太師の視線を避けるかのように、茶太保は違う方向を向いて答えた。
「…公子のなかでも誰よりも優秀だったな」
「ああ、清苑公子がいたら王位争いなど起こらなかったかもしれん」
もう少し話を聞いておきたかったが、バタバタと誰かがかけてくる足音が聞こえて、春麗はそっとその場を立ち去った。
のちに、これを最後まで聞いていなかったことを後悔することになる。