紅梅は緑風に乗って香る−1
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公休日明けに前もって絳攸に時間をもらっていた春麗は、王の執務室に向かうと、扉の前で絳攸が待っていた
「兄様、忙しいところごめんなさい」
「話はなんだ?」
「他の人に聞かれたくないので、ここでは、ちょっと…」
「今なら主上も楸瑛も府庫だから、中に入れ」
と言われて室に入る。
確かに誰もいなかったのでお茶を淹れて出してから、話し始める。
「話は二つあります…まず、わたくしの礼部侍郎についてですが…秀麗が冗官になるのに反して、という人事、単刀直入に聞いて裏に何かあります?」
「お前なら聞いてくると思ったが…驚くほど何もない。魯尚書たっての希望、黄尚書も黎深様も今回は賛同したから決まったまでだ」
春麗はお茶を飲んでふぅ、と息を吐く
「本当にそうだったんですね…兄様が侍郎になられた時、すごく反発大きかったでしょう?」
「あぁ…まぁな。春麗もそこは覚悟しておけ。戸部と…まぁ吏部は他人に構っている暇などないからあまり気にならないだろうが、他からは来るだろうな」
「わかりましたわ。まぁ物理的な攻撃ならかわせると思うけど…」
キリリと表情を引き締める。
「手に負えないことが出てきたら俺に相談しろ。どこまで助けられるかわからんが、圧くらいはかけてやる。ま、その前に黎深様がそいつを飛ばすだろうがな」
苦笑いしながら絳攸が言う。
ふふ、と春麗も笑った。
「ありがとう兄様。少し気が楽になったわ」
「それで、もう一つの話はなんだ?」
春麗は少し視線を逸らして、一拍間をおいてから口を開いた。
「…あのね…個人的なことなんだけど…主上や藍将軍には内緒にしてくださる?」
「あ、あぁ、構わないが…」
「わたくし…結婚したの」
「…」
鐘三つ分、絳攸は固まった。
「兄様?」
「はぁ?結婚、だとー!!!???」
「声、おっきい!」
「相手は誰だ!?」
「…黄戸部尚書」
今度は三拍分、きっちり固まる。
「ちょ、ちょっと待て、お前、玖琅様が…いや、黎深様がよく反対しなかったな…いや待てよ、黄尚書の嫁か…仮面と暮らしてるのか!?」
「兄様、言い方!そんなに混乱しなくても…黎深叔父様ははじめは反対はされたけどね、好きにしろ、って。玖琅叔父様には父様から話してるからわからないわ。わたくしのところに来ると思っていたのだけれど…お文でやりとりしたけど、特に、何も。父様がうまく話してくださったみたい」
まず、紅家関係の疑問を先に整理すると、絳攸は少し前に黎深が宮城でも邸でもやたら不機嫌だったのを思い出した。
(あれは、春麗の結婚が原因だったのか…)
壮大な被害を思い出し、がっくりと肩を落とす。
それから、相手の名前から、記憶を辿った。
「そういえば…お前、2年前の夏に侍童でいた時、黄尚書の邸で捕物があったときにいたよな?あの頃からそういう仲だったのか?」
「えっ!まさか!あの時は、何も。あれはちょっと詳しくは言えないけど、行きがかり上、尚書と一緒に出ていただけで…途中で秀麗が介抱してた子供を見かけて黄尚書が拾っただけで、本当に色々偶然だったのよ…」
「そうなのか?」
「えぇ。その…お付き合いしましょう、ってなったのも、年が明けてからだし…」
「えっ?そうなのか?早くないか?」
「うん…本当は結婚はまだ先で、っていうことにしていたのだけど、いろいろあって、早い方がいいということになったのよ。それでトントン拍子に決まって、先日…」
(色々あって、早い方がいい、ってことは…)
「こ、子でもできたか!?」
「兄様のばか!黄尚書が婚姻前にそんなことするわけないじゃない!」
近くにあった手巾を投げつける
「そ、そっか…、仮にも黄家の方だし、お前は紅家直系の姫、だからな…近くに常春がいるせいか、思考がおかしくなっているか…すまない…」
絳攸はいつだったかの秀麗を見舞いに来た時の黄尚書の大人の男な振る舞いを思い出し、それをうっかり春麗に重ねてしまって、なぜか顔が赤くなった。