紅梅は緑風に乗って香る−1
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春麗は酒とつまみが足りなくなったので、侍女に知らせに廊下に出る。
仮面を外した鳳珠がいるところに出られる瑞蘭に頼んで、お酒を持って先に室の前に戻って待つ。
庭院を眺めながら遠くを見る。
昨日、黎深についた嘘ー近い人の先を見ないことーは、天つ才の黎深には簡単にわかってしまったようで、突然同期を誘って歩いた上での今日の宴会だ。
きっと、鳳珠の夢であるこの宴は長くは続かない。
知っているからこそ言えないこともあれば、言いたくないこともある。
変えることができるなら変えたい…が、おそらく春麗にはその力はない。
小さくため息をついた時、黎深が出てきた。
「黎深叔父様…」
「私がしてやれるのは、ここまでだ」
「はい…」
「悠舜には尚書令は降りろと言い続けるが、おそらく聞かないだろうな。その時は…鳳珠は、お前に任せた」
「わたくしに…できるでしょうか?鳳珠様にとって、黎深叔父様と悠舜様の代わりはいないのに…」
ふと、遠くから侍女たちの気配がして、会話を止める。
「叔父様、今日は楽しいですか?」
「あぁ…昔に戻ったみたいだな。そこに春麗がいてくれて、嬉しいよ」
黎深は子供の頃のように、春麗の頭を撫でながら答えた。
滅多に聞けない黎深の本音が溢れる。
それは、幸せなことだと春麗は知っているから、にっこり微笑んだ。
この本音が聞ければ、その時が来てもやっていける気がした。
瑞蘭からつまみを受け取って、室に戻ると、柴凜が来ていた。
「春麗殿、遅くなってすまなかったね」
「凜様、こんばんわ。お食事は全商連で済まされると聞いておりましたが、水菓子か甘味でもご用意しましょうか?」
「いや、私は旦那様とお酒だけいただくからお気遣いなく」
「わかりましたわ。玉蓮姫とわたくしは甘味ね」
と言いながら、色とりどりの果汁を寒天で固めたものを玉蓮に渡す。
「春麗はもう飲まないのか?」
「甘いものでお酒を飲むのも楽しいものなんですよ。だから、お酒もいただきます。まぁお酒とだと甘いものはたくさんはいただけませんけど。試してみます?」
と鳳珠の問いに対する答えに、春麗が一つ差し出すと、鳳珠は少し考えてからぱくっとそれを食べた。
飛翔がうへぇ、という顔をする。
「これは…なかなかなものが見られましたね。鳳珠、完全に骨抜きですね」
悠舜が面白いものを見た顔つきで冷やかしてから、春麗はぼんっ!と赤くなった。
自分のやったことにようやく気が付いたらしい。
くつくつと笑った鳳珠が耳元で「今度は二人きりの時にまたしてくれ」と言って、さらに赤くさせたのを、悠舜と凜が面白そうに、黎深が殺気丸出しで見ていた。