紅梅は緑風に乗って香る−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日、公休日前の夜、とある邸に朝廷の高官が集まっていた。
鄭悠舜尚書令、紅黎深吏部尚書、管飛翔工部尚書、邸の主人である黄鳳珠戸部尚書ーいわゆる悪夢の国試組。
ちなみに、同期で中央にいる來俊臣刑部尚書は黎深が声をかけなかった。
彼は夜は仕事をしているからだ。
ほかに景柚梨戸部侍郎と娘の玉蓮、欧陽玉工部侍郎。
紅春麗礼部侍郎兼戸部・吏部尚書補佐ー春麗は支度に時間がかかっているらしく、まだこの場にはいなかったがー
「玉蓮、しばらくこっちに座っているといい」
と鳳珠が自分の隣の席に玉蓮を座らせて何かと世話を焼く。
その間に、悠舜は柚梨と飲みながら碁の話で意気投合していたが、黎深が玉蓮を構い始めたのを見て目を見張る。
「珍しいですね、黎深が姪たち以外に興味を示すのは。昨日、突然、”明日、鳳珠の邸で飲むから来い”と言われてなんとか都合をつけてきたのですが、景侍郎のお嬢さんまでいらっしゃるとは思ってなかったですよ」
「それは…同じように昨日、紅尚書が戸部に来られてこの宴の話をいきなりされたのですが、”玉蓮を連れてくるように”とのことだったので。どうやら気に入っていただいたようなんです。管尚書と欧陽侍郎へ声をかけたのも紅尚書ですよ。ところで、今日は奥方は?」
「そうだったんですか。全商連の方で宴があって、帰りに迎えに来てもらいます。向こうが早く終われば合流できるでしょうね」
話している横で鳳珠から一通り玉蓮に紹介が終わると、玉蓮は
「ほーじゅさまのお友達はれーしんさま以外も圧が強いですね」
と、のほほんと言う。
「圧が強い、とはなんだ?」
「うーん、見た目と肩書き?」
工部組を見ながら呟く。
「まぁ確かに飛翔はゴツいな」
黎深が扇で指しながら笑う。
「欧陽侍郎は綺羅綺羅してますねぇ」
「嬢ちゃん、奇人の顔見てもなんともないのな。ちなみにコイツのはジャラジャラというんだ」
飛翔が訂正すると
「あなたは美しいものが理解できませんからね!」
「実際に陽玉はジャラジャラしてるじゃないか!」
「私の名は玉です、何度言ったらわかるんだこのトリアタマ!」
といつものやりとりが始まる。
あまりの剣幕にぱちくり、と目を見開いた様子を見て
「やめないか、玉蓮が驚いている」
鳳珠が止めるが全く聞いていない二人。
「お二人は仲良しなんですねっ」と言いながら、玉蓮は黎深が酒の代わりにと玉蓮用に持ってきた紅州蜜柑の果実水を美味しそうに飲んだ。
その様子に満足そうに黎深が玉蓮の頭を撫でると、とんでもないものを見たという顔で工部組の喧嘩が止まり、悠舜も再び驚いた顔を向けた。
「ねぇ、ほーじゅさま、春麗ちゃんはまだ?」
「春麗って、紅春麗も来るのか?じゃ、酌でもしてもらうかな」
と飛翔が訪ねがてら言うと
「「ダメだ!」」
と鳳珠と黎深が声をそろえた。
「なんでだよ?」
と飛翔が尋ねた答えはなぜか玉蓮からで得意げに言う。
「春麗ちゃんはほーじゅさまとれーしんさまのトクベツだからです」
ちょうどその時に
「おまたせしました」
と室の外から声がかかった。