藍より深い碧の大地−2
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朝議の後、鳳珠は家人に連絡を入れて、婚姻の手続きを済ませた。
完了したと連絡があり、ひとまず胸を撫で下ろす。
柚梨と春麗を尚書室に呼び、扉を閉める。
「さきほど、婚姻の手続きが終わった」
春麗の頬がさっと赤くなる
「おめでとうございます。鳳珠、春麗ちゃん」
「あぁ、ありがとう」
「ありがとうございます、柚梨様」
柚梨はニコニコしていたが、ふと気になっていたことを口にしてみた。
「戸部官全員の悲願にして最大の懸念事項の鳳珠の結婚ですからね、報告したいところですが…同じ部署はダメという決まりはないものの、まだ女人官吏の反対派が多くいる中では、下手に足元を掬われかねないのも気になりますね…かと言って、黙っているのも…ですし、鳳珠や春麗ちゃんに見合いの話や恋文が来るでしょうから、それはそれで困りますね」
「まぁ、急がなくていい、いずれわかるだろう」
「戸部の方なら、噂話みたいにべらべら言って歩くような方はいらっしゃらないですよね?主上と周りの方がよほど喋りそうです…絳攸兄様と珀明さんには早くお伝えしないといけないですが…兄様には主上と藍将軍に言わないように口止めしないと」
春麗の的確な指摘に、二人は苦笑いした
「まぁ、主上の耳にはじきに入るでしょうけど、碧官吏もですか?」
「朝は…変わらず一緒に行くのか?」
「そのつもりですが…いけませんか?」
少し不機嫌そうな鳳珠の声音を汲み取って、春麗は聞いてみる
「話をできる同期が珀明さんしかいないんです…見た目上は、あまり生活が変わらないようにもしたくて…」
「…わかった…構わん」
「ありがとうございます」
嬉しそうに破顔した春麗をみて、鳳珠と柚梨は複雑そうな表情で顔を見合わせた
「ところで、わたくしの礼部侍郎ってなんなのですか?秀麗の冗官降格と反対の見せしめ人事みたいに見えますが…」
「秀くんのこととは関係ないです。詳しくは魯尚書に聞いてください。たっての希望ですよ」
柚梨が宥めるように言ったのを聞いて、「ならいいのですけど…」と小さくつぶやいた。
午休みに吏部に顔を出して、午ごはんがてら珀明を誘って府庫に行く
折詰を開きながら、
「父様、終わったようです」
と告げると、よかったね、と返される。
「何が終わったんだ…?」
「わたくしの…婚姻の手続きですわ」
「はぁ?なんだそれ?聞いてないぞ!」
珀明は立ち上がって叫ぶ
「ごめんなさい。色々あって…官吏は続けますから、今まで通り朝もご一緒してくださいね」
「ちょっと待て、嫁に行ったのに違う男と出かけるとかなんだよ?っていうか、相手は誰だ?」
邵可は苦笑いして二人を見ている
「えっと…黄戸部尚書ですわ…だから、今までとは変わらない生活なんです…限られた方にしかご報告していないので、とりあえず秘密にしておいてくださいね。まだ絳攸兄様にも伝えられていないんです」
もごもごと語尾を小さくしながら春麗は答える
「えっ?身内だろ?そっか…それで最近、うちの尚書の機嫌が悪かったのか…」
「それは…すまなかったね、珀明くん」
邵可は黎深が毎日愚痴っていたのを聞かされていたので想定はしていたが、吏部に被害が出ていることは知らず申し訳ない気持ちになった。
「それよりも、櫂瑜様が茶州にお立ちになるときに、秀麗や影月さんたちに文をお願いしようと思うのですけど、珀明さんはどうされます?」
「お前、櫂州牧と知り合いなのか?」
「ええ、年明けにお願いしてお会いしていただいてから、お文のやりとりをしていますわ。茶州に行かれるのは疫病の件が出たときに、後任になって欲しいと秀麗から頼まれたとのことです。珀明さんも書かれるなら、一緒にお願いしますよ?」
「わかった!秀麗と小動物に書かなければな!たしか聞いた話ではすぐに茶州へ向かえとの話だったから、一両日中には出られるだろうな…よし、今日の夕方までには仕上げる」
言ってから珀明は急いで折詰を食べ始めた
「書きあがったら戸部にいらしてくださいな、一緒にお渡ししに行きましょう」