藍より深い碧の大地−2
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「ー絳攸、どう思う?」
「ええ、いいと思います。このくらいの処置は必要でしょう。それから、魯尚書からの申し入れも、吏部・戸部尚書が了承したのであれば、受けるべきだと思います。」
劉輝は妙に暗い顔をして、パタリと机案に突っ伏した。
「…何だか余は、秀麗に嫌われることしかしてない気がする」
「大丈夫ですよ。このくらいで嫌うような娘じゃないでしょう」
「反対に、春麗を上げることに対して秀麗がどう思うか…」
劉輝は少し考えてから口を開いた
「余の補佐は、春麗の方から辞めたい、と言ってきたな」
「最初から一年と区切っていましたからね。あなたが行う措置も、春麗から最後の助言として後押しされたじゃないですか。直接話すことは少なかったでしょうけれど、やることはしっかりやってもらった。これからは春麗の持ち味を対外的に発揮していくでしょう。それに…」
絳攸は苦笑いして続ける
「うちの上司は想定できましたが、戸部尚書まで雑用以外はほとんど表に出さずに隠してしまった。一方で、あの戸部で一年耐えられたことで”戸部の秘蔵っ子”とまで呼ばれるようになった上での兼務だから、反対派が何を言っても、あの三人が黙らせるだろうし、春麗なら下手を打つことはないだろう」
劉輝は小さくため息をついた
「思えば、最初に出会った時に、余は秀麗ばかりを見ていて春麗をよく知ろうとしなかったことが、距離を取られた原因だろうな。今になってそれに気づくとは…余は春麗にも秀麗にも謝らなければいけない」
「まぁ、あまり気にしないと思いますけどね。ただ春麗に次に同じようなことをしたら、多分、三人の尚書たちが黙っていないと思いますが」
紅尚書、黄尚書、魯尚書の顔を思い出し、劉輝はブルリと震えた
その後の、朝議ー
「調べによると杜・紅両州牧は、ともに州牧の権限を返上して現地に赴いたということ。特に紅州牧の二度にわたる権限放棄は、州牧という地位を持つ責務の重さをまるでわかっていないことの証でありましょう。主上の言に逆らったことといい、朝廷でのあの傍若無人な振る舞いといいー断じて見過ごすわけには参りません」
高官らから多くの賛同が次々と集まる。
絳攸は朝堂に居並ぶ朝廷百官を一瞥し、賛同した官吏らの顔ぶれを確かめる。
吏部・戸部両尚書が黙っているのをはじめとして、反対を口にする者はいない。
「ーわかった。杜影月及び紅秀麗は、即刻茶州州牧を解任、代わりに現黒州州牧櫂瑜を着任させる。黒州州牧の後任は春の除目まで保留、それまで職務は現黒州州尹に兼ねさせることとする。櫂瑜は即刻茶州へ飛び、早急なる案件の引き継ぎと茶州の安定を。杜影月に関しては官位降格、また櫂瑜を後見とし、彼に師事し、研鑽を積んでもらう」
「…で、では、紅官吏の処分は?」
「引き継ぎをもって、早急なる貴陽帰還を命じる。官位は全て剥奪、当分登殿を禁じ、謹慎処分とし、次の官位が決まるまでは冗官となす」
水を打ったようにその場が静まり返った。
女官吏の増長甚だしいと憤懣やるかたなかった者たちも、想像以上の厳しい処断に言葉もなかった。王や大官の多くが、特にあの女州牧を贔屓していると思っていただけに、まるで口を挟む隙もない冷徹な措置に、誰もが耳を疑った。
「二人の処分はこの通りに。また春の除目に合わせて、現茶州州尹鄭悠舜も朝廷に呼び戻し、空席の尚書省尚書令に叙す。また、昨年揉めた礼部の侍郎に、紅春麗を叙す」
朝堂が大きくざわついた。
紅黎深と黄奇人が僅かに視線を上げた。
ざわついている内容の大半は鄭悠舜の帰還であり、先ほどまで目の敵になっていた女官吏の片割れである紅春麗については、ほとんど話題にもなっていなかった。