藍より深い碧の大地−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
月が中天を越えて傾き始めた頃
「春麗、まだ起きてたのか?」
と鳳珠は入室の許可を待たずに春麗の室に入ってきた
「鳳珠様…」
いつかのように寝台に膝を抱えて座ったまま、顔だけ少し向けてくる
(こっちを向いてくれるだけあの時よりマシか…)
「眠れないのか?」
寝台の端に腰掛けて、目の下の隈をそっと指先で撫でる
「少しでも寝ないと、また倒れるぞ」
「…」
「気になるのはわかるが、茶州を見るのはやめろ…悪循環だ」
「…」
無言の春麗に少しイラつくが、それを押し込めてなるべく優しい口調に切り替える。
「何を、見た?私に話してみろ」
「…こわい、んです…秀麗が武器を持った男たちに囲まれていて……影月さんが…囚われていて…傷だらけで…」
鳳珠は、またふと遠くを見ようとする春麗の顎を捉え、自分の方をむかせた。
「見るな」
「でもっ」
「茶州を見ているなら、私を見ていろ」
有無を言わさぬよう、じっと春麗の瞳を見つめる
(鳳珠様…)
不安な気持ちが少しずつほぐれてきて、ゆっくりと息を吐き出し、抱えていた膝を外して脚をのばしてから、自分の顎に添えられた鳳珠の手を両手で包む。
「大丈夫だ、秀麗も、杜影月も…向こうには、燕青も悠舜もいる…」
胸にこてっと預けてきた春麗の頭を撫でながら、気休めとわかっていても言葉を伝える。
春麗ができる限り傷つかないように、苦しまないで済むように。
少ししてからふっと力の抜けた春麗に目を落とすと、どうやら眠ってしまったらしい。
そのまま横にさせたものの、手は握られたまま。
起こさないように、そっと隣に横たわり掛布をかける
(あとわずか、と思えば理性も持つ気がするが…)
安心したのか、あどけない表情で眠る春麗の額に口づけを落として、鳳珠は瞳を閉じた。