藍より深い碧の大地−1
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三日後ー
「それで、”戸部の秘蔵っ子”はどうだった、陵王?」
「珍しく下官に興味を持ったな」
ふわりと紫煙を燻らせて鷹揚に答える
「お前だって、孟侍郎に任せずに自ら話を聞いたんじゃないか」
「そりゃあ、宋太傅が後見で羽林軍指南を指名したぐらいだからな、どんなもんか一度見ておこうと思うだろう。それより、旺季ともあろう男がそんな下っ端に目を向ける方が驚きだ。そうだな…すでにある程度の案を作ってきて、それを元に話を進めるあたり、あの猪突猛進な女州牧より使えそうだぞ」
旺季は少し目をみはる
「紅家直系、初の女人官吏にして状元及第…中央で4部門兼務にも関わらず、官位は妥当で実力のほどは今まで聞こえてこなかった…なぜ紅秀麗の方が目立つのか…?」
「”戸部の秘蔵っ子”だから、戸部が隠していたんじゃないか?今回もしっかり景侍郎がついてきていたからな。それにしてもあの戸部で一年近く持つとは信じられん。どこかで逃げ出すかもしれないが…」
(その時は拾ってみても面白いか?)
ふぅ〜っと煙を遠くに吐いて、それが消えるのを見つめながら陵王はぼんやりと考えた。
夜明けごろ、府庫ー
「…府庫の、仮眠室?」
秀麗は少ししてようやく思い出した
(ふ…父様にかじりついてわーわー泣くなんてほんと久しぶり…)
もう大丈夫、と仮眠用の寝台から身を起こして、書庫へ向かう
なぜか府庫のあちこちで色々な人が眠り込んでいた
悠舜と柴凜は床に座布団を敷き、お互いに支え合うようにして書棚に寄りかかって眠っていたし、最後まで各部署で折衝をしてくれた管尚書は酒瓶片手に椅子で仰向けで寝ていたし、欧陽侍郎も向かいの卓子に突っ伏して寝息を立てている
「え、あそこにいるのって、黄尚書と景侍郎と…魯尚書まで」
三人は行儀良く椅子に座り、俯くようにして眠っているが…
「あれ、春麗?」
黄尚書の肩にもたれかかって、ぐっすりと寝ていた
気になってよく見ると、黄尚書と春麗はそっと手を繋いでいる。
「春麗…」
(やっぱり黄尚書と…?帰ってきたときに会った時は何もない、って言ってたけど…)
と思い、しばらく二人を見つめる
気になるけれど、気にしている暇もない…
「あら、珀明と絳攸様、藍将軍も?」
今回の一件に関係ない人たちまでいることで、秀麗もなんとなく悟ってしまった
(もしかしなくても私、心配かけちゃったのかしら)
これから、出立。