藍より深い碧の大地−1
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邸に帰ってから、鳳珠は家令と瑞蘭に春麗との婚姻のことを伝える。
黄家最大にして最難関の課題であった鳳珠の結婚が決まったことにより、二人の喜びは言葉で表せるものではなかった
その様子を目の当たりにした鳳珠としては
(随分と心配をかけてしまっていたのだな)
と内心苦笑いしかできない。
「私と春麗の仕事のこともあり、黄州に戻って婚礼の儀を挙げる時間もないので、紅家と相談した結果、早めに日取りを決めて手続きをすることになった。式は…そうだな、だいぶ先になると思うが、貴陽で行う予定だ。だからといって何もない状態で紅家直系の姫をいただくわけにもいかないので、悪いが準備はしっかりお願いしたい」
「かしこまりました」
「とはいえ、ここで暮らしているから、そんなに用意するものもないとは思うが…」
「御館様、贈り物やお衣装など、細々したものは用意しないといけませんよ?」
「そうですね。こちらも最低限とはいえ室を整えたり、そのほかの準備もありますから、忙しくなります」
「急がせて悪いが、遅くとも春までには…黄州には私が文を書くので、早馬で明日出して欲しい」
「かしこまりました」
二人はニコニコと笑って頭を下げた。
「それにしても…」
瑞蘭が嬉しそうに口を開く
「最近、御館様と姫様の雰囲気がとてもよかったので、お話がまとまってくださって嬉しゅうございますわ」
「本当に」
家令も同調する
「そうか?」
「えぇ。家人の間ではずっとお二人がうまくいって欲しいと話題になっておりましたから」
「そ、そうか…」
鳳珠は仮面の下で少し赤くなる
(家令と瑞蘭だから外していてもいいと思っていたが、つけていて正解だったな)
「お二人が並ばれたら美しいでしょうね」
「ただし、私たち以外は皆倒れてしまうがな」
家令と瑞蘭の会話はどんどん進む
なんだか居た堪れなくなってきて、「話は終わりだ」と退室を促した
瑞蘭は鳳珠の室を出て用意をすると、春麗の室に移動する
「春麗様、お茶を召し上がられますか?」
室の外から声をかけると春麗が顔を出した
「もう用意はしてありますから、よろしければお手伝いしますわ」
いかにも”話があります”との程で瑞蘭が入ってきた。
(あぁ、鳳珠様から聞かれたのね…)
瑞蘭はニコニコと笑いながら茶を淹れて出す。
「御館様からお伺いしました。春麗様、この度はおめでとうございます」
「あ、あの…ありがとう、ございます。引き続き、お世話になりますがどうぞよろしくお願いいたしますね…」
どう答えていいかわからない春麗は、とりあえず礼をした
その様子を見て、瑞蘭はくすくすと笑っている
「本当に春麗様は可愛らしくていらっしゃって。御館様は早速、黄州に御文を書かれているようですわ。おそらく、家令も。私も両親に報告しないといけませんので、明日は黄邸からまとめて文を出してもらうようにします」
「瑞蘭のご両親?」
「はい、私の両親は御館様のご両親のお邸の家令と侍女頭ですわ。私がこちらにきたのは4年前ですがそれまでは両親がこちらにおりました」
「そう、だったんですね…」
「きっと姫様に…春麗様にお会いしたいと言うと思いますわ。それより、お輿入れに合わせて、お衣装やお飾りの用意をしたいと思いますので、次のお休みの時に少しお付き合いいただけませんか?」
「そんな…あるもので特に問題ありませんよ?どのみち出仕している時は官服ですし」
ふるふると首を振って遠慮した。
「黄家に嫁いでいただくのに、そんなわけには参りませんわ。たくさん、とは言いませんけれど、ご準備させていただくので、お付き合いくださいませ。御館様のお好みはばっちり把握済みです!」
次の休み、春麗が着せ替え人形よろしく侍女たちと商人に取り囲まれたのは言うまでもない。