藍より深い碧の大地−1
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その日の夕刻、邵可は鳳珠と黎深を府庫の個室に呼んだ
「話が話なもので、私からの呼び出しで申し訳ないね」
と言い、羽羽の手紙の半分を二人に見せる
「鳳珠殿からは春麗との結婚は急がなくていいと言っていただいていたが…こういうわけで、急いだほうが良さそうなのだが…鳳珠殿はどう思われる?」
「私の方には異論はありません。それによって気持ちが変わることもありませんし、官吏も続けるでしょうから、時期が早いか遅いか、それだけのことです。できる限り私が守ります。しかし、縹家の巫女候補として狙われるとは…」
(今となっては、春麗が羽羽殿に話を聞きに行ってくれてよかった、ということか)
鳳珠は小さくため息をついた
「そういうことだからね、黎深」
「…」
「気に入らないのはわかるけれど、巫女に取られるよりいいだろう?それに、春麗は妻によく似ているからね、いずれあの男が…」
「わかってます!わかってますよ兄上!」
不機嫌さ全開で黎深は答えた。
「帰ったら玖琅にも伝えないとねぇ…日取りはどうしようか?羽羽殿の手紙だと、春には済ませた方がいいと書いてある」
黎深はパチンと扇をならす
「鳳珠は婚儀を上げに黄州に帰る時間も無いだろう」
「まぁ…な。それに、邵可殿もお前も貴陽にいるのだから、何もそれだけのために帰らなくていいだろうな…黄家の方は私がなんとかする」
「この内容だと急いだ方がいいことは間違いないから、日取りだけ決めて手続きだけしてはどうかな?婚儀は後からでも構わないかと…」
「邵可殿、でもそれでは、紅家直系の姫の婚儀としてはあまりに申し訳なさすぎるし、そういうわけにも行かないでしょう?」
「まぁ紅家直系といっても、私も殆ど家を出た身出し、それに秀麗も茶州に戻ることだし、できれば私は秀麗がいるときに式は挙げて欲しいと思っている」
「兄上…」
「…わかりました。それでは、邵可殿の案に従いましょう。ただ、私としても黄家としても春麗姫をお迎えするにあたり多少の準備も必要ですから、少し時間をください。なるべく急ぎます。どんなに遅くとも、春には」
「よろしくお願いします、鳳珠殿」
しばらくしてから、「お話し終わりました?」と春麗が顔を出した。
「春麗!」
黎深の紅い衣に抱きしめられる
「兄上から聞いたよ。影の数を増やす。見知らぬ変な人がいたら、影に合図を送るんだよ、いいね?」
「わかりましたわ、叔父様。でも鳳珠様のお邸の影はふやさないでくださいね?」
しっかりと黎深に念押しをしてから、鳳珠と春麗は戸部に戻った。
「兄上、先程の羽羽殿の手紙、残りの半分は何が?鳳珠には見せられない文だったのでしょう?」
(やはり黎深は許してくれなかったか…)
邵可はもう一度文を差し出す。
秀麗に関する部分を読んだ黎深は、眉間に皺を寄せた。