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藍より深い碧の大地−1

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主人公
侍童(男装)の時の名前



翌朝、指定された時間に仙洞省に向かう。
うー様へのお礼は、果物を使ったお菓子にした。

「お忙しいところお時間をいただき申し訳ございません。戸部におります紅春麗です」

きちんと跪拝する

「お話しするのは初めてじゃな、まぁお掛けなさい」

お礼を言って、指定されたところに座るとお茶が用意されていた。

「今回の依頼、文の内容は…紅貴妃のことがあったからじゃな?」

「はい。非常にその…個人的な理由で申し訳ございません」

お茶を一口飲んで、美味しさに驚く。



「理由は会って聞かせてもらおうと思っておったが…あなたは決められたのじゃな。嫁ぐ先を…あぁ、顔に書いてあるからのぅ…子については、相手とのこともあるからなんとも言えんが、紅貴妃とは違い、おそらく大丈夫じゃろうよ。春麗姫は母上から引き継いでおるのは力と容姿だけじゃ。最も、母上の持っていたものとは異なるが」

文にみなまで書かずにおいたのに、聞きたいことを全て言い当てられて、春麗は驚きで目を見開いた。


「力のことは、誰にも知られないように隠しておきなさい。あと…決められているなら、婚姻は、できるだけ早くした方がいい」

「えっ?」

「父君に、私からそう言われたと伝えておけば意味はわかるはずじゃ。そうじゃな、こう伝えて欲しい。春麗姫の力を狙う者が近いうちにきっと来る、それを防ぐために早めに婚姻をし、早めに初夜を、と」

(力を狙う者、と防ぐために初夜…??一体どういう?)
春麗は混乱して青くなったり赤くなったりした

「とはいえ、嫁入り前の姫君が父君に直接言うのは言いづらかろうのぅ…少し、待つがいい。父君はそれについて、反対はしないはずじゃ」

と言って、文を書く。

春麗に話した内容よりだいぶ長い内容を書き連ね、畳んでから封をして渡した。


「これを、邵可殿に届けて欲しい」

「ありがとう…ございます」


「あと、また何か困ったことがあったら、いつでも訪ねて来るといい。個人的なことでも、政に関してでも、仙洞省は力になろう。紅官吏であれば文の連絡なしで構わぬ」

「ありがとうございます」

春麗は立ち上がって跪拝した






その足で、戸部に直接戻らずに、府庫に寄る。

「父様」

「珍しいね、春麗?どうしたんだい」

「あのね父様、少し話があるんだけれどいいかしら?」

奥の邵可の個室に入る。

「仙洞省の羽羽様に、わたくしの身体と力のことを聞きに行ったんです。その時に、これを父様に渡して欲しい、と」

邵可は無言で受け取って、文の中身を確認する。
前半は春麗のこと、そして後半は羽羽が春麗には話さなかった、秀麗のことが書かれていた。


「君はこの手紙は読んだのかい?」

「いえ…わたくしに関すること…その、力を狙ってくるものがきっと来るから、相手が決まっているなら婚姻を早めに、と言うことを、その…少しはお話ししてくださいました。でも誰が来るのか、とか、婚姻を早めに、という理由は教えてくださいませんでした。」

春麗は赤くなってから青くなって俯いてしまった

「誰が来るのか、何が起こるのか、父様はわかりますか?わたくしは…それがすごく…今は、怖いです…」


邵可はガリっと奥歯を噛んだ。

少し前に、秀麗のところに現れた男が、妻が秀麗の身体の中にいるから秀麗に執着すること、そして春麗を見ればその容姿ー妻によく似た姿ーに執着することはわかっていたが…羽羽の文に書かれていた春麗が異能のために巫女候補として縹家から狙われるということは盲点だった。

珠翠の時は気をつけていたが、春麗は縹家の直系ということもなく、また幼い頃から使っていたので完全にその思考に思い至らなかった。

生前の妻が「誰にも悟られるな、知られたら利用される」と言っていた意味が、ようやくわかった。
それを防ぐためには…多少距離感はあったものの可愛い娘を急いで嫁に出さないといけない…

しばらく難しい顔をして思案している邵可が心配になり「父様?」と春麗が声を掛ける。


「羽羽殿が言う通り、婚姻は早めのほうが…春にはしたほうがいいだろうね…鳳珠殿と黎深には、私が話そう」

「えっ?」

「大丈夫だ、春麗は心配しなくてもいい。私たちが春麗を守るから、心配しなくていいんだよ」

邵可はいつもの笑顔に戻って安心させた。


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