藍より深い碧の大地−1
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「別の吟味、は終わりましたか、邵兄上」
氷の視線でズバリ本題をついてきた末弟に、邵可は内心で舌打ちした
「あ、それね、あのね」
「あの黎兄上が書翰を問答無用で燃やさなかったことをとっても、重要度がわかるものです。当然、春麗、秀麗に話は通してあるんでしょうね」
「それ、なんだが…春麗は、だめなんだ」
手際良く邵可の蜜柑を剥いていた玖琅の手が止まった。
「春麗はだめ、とは?」
「春麗は…相手を自分で決めてきてしまったよ」
「邵兄上、あの子は紅家直系、しかも長姫ですよ!?何考えているんですか」
邵可はすこしためいきをついてから話した
「君も知っての通り、あの子は長姫の座を自ら降りたんだ。秀麗のためにね…私はあの子を秀麗と同じように思っていたつもりだったけれど、”つもり”なだけだったんだ。ずっと自分を二の次にして、私と同じように秀麗のことを優先してきたあの子が、自分の人生を歩み始めた…私には止める権利はないんだよ」
「黎兄上のところにいた春麗であれば、紅家直系の立場は秀麗よりよくわかっているでしょう?それを勝手に決めてきたなど…いくら邵兄上がぼんやりしていても」
「黎深も、違う意味で文句はあれど了承している」
「・・・」
玖琅は小さく舌打ちした
「お相手は…玖琅の考える最善の選択肢ではないけれど、悪くないと思うよ。家格、人物には君は反対はできないと思う」
「誰…なんです、それは?」
「黄鳳珠、戸部尚書」
玖琅は目を見開いた
「それは…今、春麗はそちらの邸に住んでいるのですよね?そこで手をつけたということですか!?」
「違う、違うよ。彼はそんなことはしていない。彼の人柄は私も良く知っているしね、黎深が影をつけているのだから、何かあったらとっくに自分の邸に引き取ってるよ。あの子は私の娘だが、黎深が実の親以上に面倒を見ていたのは君も知っているだろう?春麗に対して愛情過多の黎深が、それを許すはずがない。」
「確かに…」
「まぁ、国試を受ける前から、縁があったからね。いつから二人が惹かれあったのかはわからないけれど…鳳珠殿はあちらに行ってから一度も帰ってこない春麗の様子をマメに知らせてくれたし、婚姻に関しても、春麗の気持ちを確認してからすぐに自ら申し込みに来た。それに…なんといっても、春麗が自分からあのことを話している…複雑な気持ちだが、彼女にとっては彼以上の人はいないと思うよ。官吏として歩み始めたばかりだから当面の間はまだ今の状態で、と言っていたけれど、あれはもしかしたら割とすぐに結婚するんじゃないかな」
「…そうですか…邵兄上も黎兄上も了承しているなら…私が許さないといっても無理でしょうね」
気を取り直すように、玖琅は一口茶を飲んだ。
「でも、秀麗は別です」
「縁談は私と黎深で全部目を通したよ。今はそれで十分だ、一旦君が持ち帰りなさい」
「…秀麗は、知らないんですね?」
「直ぐに茶州に戻っちゃうのに、今教えても仕方ないだろう。それに、断言してもいいけど、今見せても秀麗は片っ端から断るよ」
「…政略結婚が嫌、と言うことですか」
「いや、それ以前の問題だよ。そもそも今の秀麗は結婚とか考えてもいないと思うから…春麗もそうだったと思うんだけどね」