白銀の砂時計−2
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※ここから先、柚梨の娘が出て来るようになります。名前変換はありません。Ray小噺に登場について書いてありますので、先にそちらをご覧の上、お読みいただけると嬉しいです
帰る前に少し春麗と街歩きをしたいから、ついでに玉蓮の好きな菓子を買おうと鳳珠が提案した。
「鳳珠様は玉蓮姫のことをよくご存知ですし、本当に可愛がっていらっしゃいますね」
「そうだな…黎深が春麗や秀麗を溺愛しているほどではないが…心のどこかで羨ましく思っていたのかもしれないな。玉蓮がよく懐いてきたのもあるし…それでも最近はあまり会っていなかったから、この前見た時に大きくなっていて驚いた」
「そうなんですか?」
「そうだな…ここ二年くらいは新年以外会っていないと思う。忙しかったからな。あぁ、この店だ。たぶん、ここの菓子は春麗も気にいると思うぞ。この時期は蜜柑や苺を使った大福もうまい」
と暖簾をくぐった。
帰ってから柚梨と玉蓮がくるのを待つ。
「春麗、その…私たちのことだが、柚梨には話しておいてもいいか?なにぶん、いつまでも独り身の私の心配を随分させてしまったし、見合いの話も大量に持ってこられたし、この先、知っておいてもらったほうがいいと思う」
「鳳珠様がよろしければ構いませんわ。きっと、明日以降は黎深叔父様が戸部に来られる頻度が上がるでしょうから、その時に叔父様から言われるより、鳳珠様から伝えていただいたほうが柚梨様もいいでしょうし、わたくしも嬉しいです」
玉蓮がきたことを伝えにきた瑞蘭が、二人の雰囲気がいいのを見て、声を掛けるか少し躊躇っていたが、あまり待たせるのもと思い、伝える。
「わかった。行こう、春麗」
さっと腰に手を回しエスコートする様子を見た瑞蘭は、目を輝かせて、夜に家令と話し合いをせねば、と心に決めた。
通してあった応接で玉蓮と柚梨は出されたお茶とお菓子を楽しんでいた。
室に入って、鳳珠は仮面を外す。
「ほーじゅさま!春麗ちゃん!」
玉蓮が立ち上がって挨拶をする
「柚梨様、玉蓮姫、こんにちは」
「今日はほーじゅさまにお願いがあってきました」
「なんだ?」
「前にお会いした時に、新年に何が欲しいか?と聞かれましたよね?今年もこのお衣装ありがとうございました。でも、欲しいものをまだお答えしていなかったと思って」
贈られた衣装を着てきた玉蓮は、くるりと回って見せる。
「あぁ、そのことか」
柚梨が口を挟む
「衣をいただいたからそれでいいではないか、と言ったんですけど、どうしてもお願いしたいと…すみません」
「いや、構わん。衣はどちらかというと奥方の要請だからな。よく似合ってるぞ。それで?」
玉蓮をひょいと膝の上に乗せて構いながら話を続ける。
「大人の方が使うような、硯箱が欲しいです。春麗ちゃんに選んでいただきたいです」
?
鳳珠と春麗は顔を見合わせる
「お勉強をするときに、使うでしょう?ほーじゅさまと春麗ちゃんが選んでくださったものなら、頑張れる気がして」
玉蓮の言葉を聞いた春麗はにっこりと鳳珠に微笑みかける
「わかった。では、一緒に選ぼう。勉強頑張っているんだな」
膝の上の玉蓮の頭を撫でる。
もう子供じゃないです!と不服そうな玉蓮
侍童のころによくわしゃわしゃと撫でてもらっていたのを思い出して、春麗は少し複雑な気持ちになる。
少し口を尖らせてつまらなさそうな顔をしていたのか
「春麗ちゃん?」
と柚梨が話しかけてきた。
それに気がついた鳳珠は、玉蓮を膝から下ろして、代わりに隣にいた春麗を膝に乗せる。
「えっ?鳳珠様?」
「なんだ?玉蓮が羨ましかったんじゃなかったのか?」
同じように頭を撫でながら、喉の奥でクツクツと笑って鳳珠が言う
「ほほほうじゅっ!あ、あなた!」
柚梨があたふたとしている
春麗の耳元で「言ってもいいか?」と甘い声で鳳珠が囁いた。
真っ赤になってコクリと頷いた春麗を見て、玉蓮が
「ほーじゅさまにとって、春麗ちゃんは特別なんですねぇ」
とまたお菓子を頬張りながら無邪気に言った。
「と、いうことだ、柚梨」
「えぇぇ??そういうことだ、ってどういうことですか?雑すぎますよ!ちゃんと説明してください!鳳珠!春麗ちゃん?」
鳳珠は春麗を見る
「え…と…そういう…こと、です?」
「なんで疑問形なんだ?」
不機嫌に鳳珠が言う。
「え…と、柚梨様には、鳳珠様からお伝えしていただくことになっていたかと…」
「父様、まだわからないの?」
はぁ、と鳳珠は小さくため息をついてから
「柚梨、私は春麗と”お付き合い”を始めた」
「・・・お付き合い?」
「邵可殿には将来のことも含めて、申し入れをした。黎深にも伝えた。お前は随分と私の心配をしてくれていたから、伝えておきたいと思ってな」
きっちり三拍おいてから、柚梨はようやく口を開いた。
「鳳珠…それは、春麗ちゃんと…やっと鳳珠にお嫁さんが…!!!春麗ちゃん、鳳珠をどうかよろしくお願いします」
柚梨は涙を流しながら、鳳珠の膝の上にいる春麗の手を取った
「父様、よかったね、ほーじゅさまのお嫁さんが決まって」
「春麗ちゃん、鳳珠に意地悪されたらすぐに私に言ってくださいね!」
(なんで柚梨は春麗の味方なんだ?)
と思いつつ、
「小姑か」
と小さくツッコミを入れた。