はじまりの風−1
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その日から府庫での勉強会が始まったので、戸部の仕事をしながら時々ある”黎深とのお茶会”は吏部尚書室で行われることになった。
初めは「兄上も一緒に」とごねていたが、「秀麗が王と絳攸兄様の勉強会の見守り隊です」と言ったらすぐにしょんぼりして「じゃぁここで」となったのだ。
「そろそろ秀麗に名乗っておいた方がいいと思いますよ。時期を逃せば逃すほど、秀麗が遠のきます」
しごく正論を言ったつもりだが、黎深は青い顔をして項垂れていた。
(全く。この秀麗バカな叔父様はどうしたものかしらね)
「本当に秀麗が可愛くて仕方ないんですね。”天寿”はそれで構いませんけれど、”春麗”は少し寂しそうでした、よ?」
ハッと黎深は顔を上げる。
「そんなことはない!私は春麗を一番大切におもっている、んだよ?本当だよ??」
近くに来て頭を撫でてくれる。
(・・・なんか違う?)
「春麗、機嫌を直しておくれ」
と言って、お茶のおかわりをついだり、お菓子を出したりしてあやし始めた。
「ぷ・・・わかりましたわ、叔父様」
納得いかない部分もあったが、にっこりと笑っておくと、黎深も満足そうに微笑んだ。
「そうだ、”春麗”にこれを」
縦長の箱を渡される。
開けると銀の小さな花飾りと紅玉がたくさんついている簪だった。
「手元に銀匙がない時に、この花を一つとって使うといい。簡単に外れる」
これから起こることを想定して渡されていると理解する。
「ありがとうございます。お心遣い感謝しますわ、叔父様」
懐にしまって、戸部へ向かった。