白銀の砂時計−2
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翌日の朝、鳳珠は邵可に文を出した。
邸で待っているというので、朝のうちに訪問する許可をとって、鳳珠は邵可邸へ向かい、春麗とのことについて結婚を前提に正式に申し入れをした。
「二つだけ確認を…一つは、百合姫のことだが…」
鳳珠は机に置いた仮面を手に取る
「顔のことが理由で振られて傷ついていたのは事実ですが…そのことは、もう。仮面をつけるのはご存知の通り、この顔と声で倒れられると面倒だから、という理由だけです。実際、邵可殿や黎深をはじめ同期、春麗姫や悠舜の奥方、うちの侍女頭や柚梨と彼の家族のように耐性がある人も稀にはいますが、大半が倒れたり使い物にならなくなるので、予防策です。朝廷での騒動は‥ご存知でしょう?」
自重気味に笑って、仮面を机に戻す
「確かに…二つ目についてだが…その…春麗には秘密があります。それついて、何か聞かれていますか?」
「秘密…とは、生まれた時のこととか、その他の…”力”とでも言いましょうか…そのことでしょうか?」
「ご存知、なんですね」
邵可はすこし目を開いて驚いた。
「それであれば…はい。あることがきっかけで、内容についても本人から聞きました。そのことを知っているのは、母上と邵可殿と黎深だけと」
邵可は心の中でため息をついた。
自分は妻から聞かされて気がついたことだった。
それを春麗が自ら鳳珠に言った、ということには驚いたし父親としては情けなく感じた。
どうも、春麗のことは昔からうまくいかない。
だがそこを黎深と鳳珠が補ってくれていることは、鳳珠の邸に厄介になることになった顛末からしても十分すぎるほどわかっていた。
自分が彼女にしてやれることは、幸せに人生を歩むことの後押しぐらいなのかもしれない。
「わかりました。あの子のことは…よろしくお願いいたします。おっしゃっていただいた通り、紅家も黄家も、互いに家のことになってしまう宿命は避けられないので、すぐに申し入れをいただいたことも感謝します。私からは、春麗の相手は鳳珠殿に決めたと弟たちには話します。ただ、彼女を裏切るようなことをしたら、私も紅家もただではおきませんから、そのつもりでいてください」
「もとより承知です。年齢差もありますし、春麗姫が若い男に心変わりしてしまうことのないように、しっかり繋ぎ止めておこうとおもいます。私の方から裏切るようなことは決してありません。私の全てを賭けてお誓いします」
邵可は少し笑った
「今のは半分冗談です。鳳珠殿の人柄は知っているつもりですから。ちょっと嫌味の一つも言いたくなるのは…父親の性というものでしょうね。ここに妻がいたら馬鹿者と張り倒されています」
”何を言うておる!背の君は馬鹿者じゃ!”という妻の声が聞こえて、苦笑して続けた
「あの子には苦労をかけてしまいました。そのことで、私たち家族にも心を開かなくなってしまった。今でも彼女の本心を知ってるのは、あの時に無理矢理こじ開け続けた黎深と横で見ていた絳攸殿と…貴方だけでしょう。どうか…春麗をよろしくお願いいたします。あの子の力を知っている貴方にしか頼めません」
邵可は頭を下げた。
「ご許可いただきありがとうございます。春麗姫のことは私の全てを賭けて守ります。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
「ところで、その…彼女には私より可愛がっている”厄介な叔父”がいるのですが…」
「そのことについて、話がありました。私がお許しをいただいた後、府庫で一度自分が邵可殿と話してから、邵可殿の前で黎深に話したい、と」
「わかりました。ではこれから出仕しましょうかね…」
「一緒に参りましょう」