白銀の砂時計−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「好きだ、春麗…」
春麗は小さく息を呑む
「お前が、好きだ…」
「ほう…じゅ、さま…」
消えいりそうな声で春麗は名を呼んで、赤くなって少し瞳を伏せた。
「春麗…以前も言ったが、この先も…官吏としても、一人の紅春麗という女人としても、私が守る。私のそばにいてほしい」
変わらぬまっすぐな視線からも気持ちが伝わってくる
でも…
「まだ…官吏としても半人前だし…やらなければいけないことがたくさん、あるんです。鳳珠様は…お優しいから…」
「ん?官吏としての私は彩雲国で一、二を争う厳しさだと思うけどな。なんと言っても”魔の戸部”の尚書だ」
春麗が言おうとしたことを汲み取って、クスリと笑って返す。
「初の女人官吏としての紅春麗にはやってもらうことがたくさんある。だがそれは恋人がいたり結婚していたらできないことではないだろう?むしろ、後に続く者が、官吏でもこの国の者たちが考える”女人としての幸せ”も手に入れているほうが、安心できるのではないか?」
「鳳珠様…」
(どうして、こんなにわたくしの考えていることがわかってしまうのかしら…?)
「女人官吏としてではなく…ただの紅春麗としてはどうだ?私の想いは受け取ってはもらえないだろうか?」
そっと春麗の前髪を撫でて、もう一度伝える
「私は、紅春麗が好きだ…」
嬉しくて瞳が潤む
(鳳珠様はいつも欲しい言葉をくださる…あぁ…こんな時、なんとお答えすればいいの…)
ぽろりとこぼれ落ちた涙を、鳳珠が親指で拭った。
「返事を…聞かせてくれるか?」
「あの…お答えする前に、ひとつお伝えしておきたいことが…」
「なんだ?」
「気が早い、と思われるかもしれませんけど…鳳珠様は…仮にわたくしが結婚しても子を産めない、と言われたらどう思われますか?」
鳳珠は少し息を呑んだ
「仮にそうであったとしても…春麗を想う気持ちは何も変わらない。子が授かるかどうかは春麗一人のことではなく互いのことだし、授からなければ養子を貰えばいい、それだけのことだ。黎深は子を作る気がなかったようだが、養子をとっているだろう?まぁ兄上の追体験をしたかっただけのようだがな」
はっと春麗は顔を上げる
「私の春麗への想いをみくびってもらったらこまるな。子が欲しいから春麗を好きなわけではないし、子が授からなかったととしても…愛する気持ちは変わらない。周りはうるさいかもしれないが、それは私が黙らせる。大事なのは、春麗と私の気持ちだ」
「鳳珠様…」
「もう一度言う。私は紅春麗を愛している。春麗の気持ちを聞かせてほしい。それが私の望まない結果だったとしても、振り向いてもらえるまで私は気持ちを伝え続けるが…」
鳳珠はどうだ?と眉を上げて答えを促す。
「…わたくしも…鳳珠様が…好き、です…」
震える唇で小さな声で答えた瞬間、準金色の衣の腕の中に抱きしめられた。
「鳳珠様…」
顔を上げると、「春麗、愛している」と鳳珠は言ってから、誓いのようにそっと口付けた。