白銀の砂時計−1
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その夜、鳳珠は悠舜と久しぶりの再会をはたしたこともあり、春麗を相手に気分良く晩酌をしていた。
「鳳珠様にとって、悠舜様は特別な方なのですね」
「あぁ…正直、同期…悠舜や黎深、飛翔たちもそうだが、私にとって友人と言える人はそれまでいなかったからな。国試を受けて彼らに出会ったことで、随分と人生が彩みちたものになった…正直、黄州の国試のこともあって、友と呼べる人は一生できないと覚悟していたが、柚梨が話しかけてくれて、国試で同期に出会って…腐れ縁の奴らだが、人生捨てたものではないと思えるようになったな」
うっかり心の内を曝け出してしまったので、照れ隠しに付け足す。
「まぁ…こんな話は誰にもしたことがない…奴らには内緒だぞ?」
春麗は鳳珠の手をとり、きゅっと握った。
(鳳珠様にとっての特別な方たちと同じにはならないかもしれないけれど…わたくしを忘れないで…)
驚いた顔でゆっくりと見つめてくる鳳珠に、口には出さずに微笑む
「そうだな…今は…柚梨も悠舜もいるし…いろいろ納得はいかんが黎深もだ。他にも友として接してくれる同期がいて…春麗、お前もいつもそばにいてくれる…私は幸せ者だな」
(どうしてわかっちゃったのかしら…?)
少し驚いた表情の春麗の髪に鳳珠は手を伸ばし、そっと頭を引き寄せる。
「ほう…じゅ、さま?」
見上げると、蕩けてしまいそうな優しい表情で春麗を見下ろす鳳珠と目があった。
(その表情は…反則ですわ…)
美貌の力全開の表情にドキドキする。
春麗は倒れないだけで、麗しいものは麗しいのだ…
赤くなった顔を隠すように、そっと下を向いた。
下を向いてしまって残念に思っていた鳳珠だが、そのことにより春麗が髪に挿した薔薇の簪が目に入る
戸部官に新年のお配りものとして酒を贈っているが、それではない気して、かといって何がいいか分からずにずいぶんと悩んで…ようやく決めた上で自分で意匠も考えた一品だった。
思い返してみれば、考えはじめたのは羽林軍で襲われる少し前だったか…
あれをきっかけに自分の想いをはっきりと自覚して、簪にしようと決めたのだったな、と少し懐かしく思いながら、すっと春麗の髪から簪を抜き取り、くるりとまわしてみる。
「今はまだ小さな薔薇だが…いつか大輪の花になるだろうな…」
そんな思いと確信も込めた意匠だった。
「その時、お前は私のそばにいてくれるだろうか…」
ひとりごとのように小さく溢れた言葉を春麗は聞き取り、意味がわからず顔をあげる。
まっすぐに自分を見つめる鳳珠の真摯な視線に射抜かれた…
「好きだ、春麗…」