白銀の砂時計−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「この件は柚梨に付いて春麗が当たれ。いい勉強になるだろう」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします、景侍郎」
悠舜夫妻が資料室に入ったあと、柚梨が鳳珠に声をかけた
「秀くんの案件を春麗ちゃんがやる、というのは、いささか…」
「秀麗は一時的とはいえ茶州州牧だが、中途半端な扱いになっているのは春麗だろう。主軸は戸部と言っている以上、戸部で結果を出さないとどうにもならん。いままでは茶州州牧という派手な官位の紅秀麗の陰に隠れるようにしていたが、春の除目までには多少なりとも形をつけておかないと、何もしていないと引き摺り下ろされる」
春麗にとっては厳しい言葉だが、大事に育ててもらっていることはわかっているし、鳳珠のこういう現実を冷静に分析して伝えてくれるところはとてもありがたいと思えた。
「そうですね。柚梨様、お気遣いはありがとうございます。でも、鳳珠様の仰る通りですから…ここでしっかり頑張っておかないと、柚梨様の玉蓮姫が国試を受ける時まで、女人官吏が残ってないといけませんからね、頑張りますわ」
そう、後に続く人たちのためにも、春麗も秀麗もここで終わるわけにはいかない。
鳳珠は満足げに頷く
「一番何もしていないのは王の補佐、でしょうね…週一回に減らしていただきましたけど、それでも多いと感じるくらいですから。結局のところ、"余分なお荷物"を目の届くところに置いておきたかっただけでしょうし…いますぐ辞めてもなんの問題もないでしょうけど、午休みが1日潰れるだけですし、予定通り春までやってキッパリ辞めます」
柚梨は頼もしく聞いていたが、最後が気になった
「"余分なお荷物"とは?」
春麗は曖昧に微笑むだけで、それにはこたえず続けた
「でも、戸部でだけは、お二人をはじめ、皆様がわたくし自身を引っ張ってくださりますから、とても嬉しいですし、頑張り甲斐がありますわ。さて、わたくしも、資料室で必要な物を揃えてきますね」
と言って出ていった。
柚梨が鳳珠を見つめると
「わからんか?まぁあれくらい感情が出せるようになってきた、というのはいい傾向かもしれないな。少なくとも…あのボンクラ王と違って私たちは信頼されているようだ」
「はぁ…それなら良かったですけど」
「仕事に戻るぞ。ぼやぼやするな」
懐から出した仮面をつけて、鳳珠は立ち上がった