白銀の砂時計−1
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戻ってきた春麗は黄鳳珠邸の自室で、簪を見つめながら、これまでのことを思い返していた。
初めて会った子供の頃は、悠舜の先を見てあまりの儚さに悲しくなって泣きついた
去年の春に外朝で再会したときは男の子の姿で後宮であった時は女官の姿…
女官の格好で泣いてしまった…
それから茶太保の事件の時に助けてもらった…らしい。記憶にないけれどそう聞いている。
ただ、お見舞いのお文もいただいたけど、男の子としてで…
夏にもう一度あった時も侍童の姿だったけれど、その時は女の子とバレていた…
「お前はお前の人生を歩まなくていいのか?」
「春麗が秀麗を守る、と言うのなら、私が春麗を守ろう」
それから、国試を受けて、戸部に配属になって、お邸に住むようになって…
羽林軍で襲われた時は、黎深叔父様と助けに来てくださった
あの話をしたときも受け止めてくださったし、
「お前が重い物を持っているなら、それは一緒に持とう。」
とも言ってくださった…
こんなにも、いつも助けていただいていた。
なんて贅沢なんだろう
そして、いつからかはわからないけれど、きっとずっと、心のどこかではお慕いしていた…と思う
侍童の時に大きな手で撫でられたのも、女官の時に抱きしめてもらったのも嬉しかった。
限られた人しか呼ばない彼の本名で呼べるようになったのも、素顔を見せてくれたことも。
もう一度、簪に目を落とす
一緒にいる時間を重ねれば重ねるほど、わたくしはやっぱり、鳳珠様のことが…
(無自覚だったけど、結構前からずっとお慕いしていたということかしらね…)
改めて自覚してしまった想いに小さくため息をつく。
まだまだやらなければいけないことがたくさんある。
愛だの恋だのにうつつを抜かしている暇はない。
それにだいたい、あんなら幼い時から知っているのだ。
鳳珠様にとっては娘みたいなものだろう…
そう思うと胸がチリッと痛くなる…
それでも、一人の時だけは、自分に嘘はつかないでいたい…
きっと、母様が望んだわたくしの人生は、わたくし自身に嘘をついてはいけない、ということでもあるだろうから…
簪を胸の前でキュッと抱いてから大切に置いて布団に入った。