白銀の砂時計−1
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食後の片付けをしながら、春麗は秀麗を見る。
朝賀の場でも感じたが、やはり急に大人びたと思った。
「ねえ秀麗、父様がいない隙に聞くけど、恋をした?」
「えっ?どうして?」
秀麗は少しドギマギする。
「なんとなく。急に大人びて…綺麗になったし、そうかなと思って」
「そ、そういう春麗はどうなのよ?春麗こそ、前から母様に似て美人だったけれど、すごく綺麗になったわよ、さっき本当にびっくりしちゃった」
「そう?あまり変わらないつもりだけれど…自分じゃわからないものなのかもしれないわね」
自分から振っておいて、矛先が変わってしまったのでこの話は今日は終わりにする。
おそらく、もう少しで鳳珠様が迎えにきてくださるから、そのことについては色々聞かれるかもしれない…
父様が分かっているから大丈夫だとは思うけど…
片付けを終えて食後のお茶を入れながら黎深叔父様から渡されたみかんを用意していたら、
「春麗、お迎えがきたよ」
と声がかかった。
「お年賀でお酒をいただいたからお通しするけど…?」
「は?お迎えって?お客様?こんな時間に??」
秀麗がびっくりする。
「春麗、まさか、まだ話していなかったのかい?」
邵可は細い目をさらに細めて春麗を見る。
「う…なんだか言い出しづらくて…」
「とにかく、お通しするからね」
「ちょっと何?どういうことよ??」
秀麗が春麗に掴みかかって問い詰めているうちに、話の主役が笑いながら室に入ってきた
「紅州牧は相変わらずお元気と見える」
「こ、黄尚書!!??」
秀麗はポカンとした顔で仮面を見つめ、春麗は気まずそうに視線を逸らした
春麗はその隙に秀麗の追及の手を逃れ、「こちらにどうぞ」と鳳珠に席を勧める。
「久しぶりだな、元気そうで何よりだ。今日の朝賀も立派だった」
「ご無沙汰しております。その…茶州へ行く際は、鴛鴦彩花の手形をありがとうございました。改めましてお礼申し上げます」
秀麗は一度気を取り直して、きちんと挨拶をする。
「あぁ、役に立ったようでよかった」
「本当にありがとうございます…それで…」
秀麗は黄尚書と春麗を交互に見る。
「黄尚書、お待たせして申し訳ございませんが、少し外しますね。父様、お相手お願いします。秀麗、ちょっとこっちに来て」
と春麗は秀麗の手を引き、急いで室を出て、自分の室に向かう。
鳳珠はクスッと笑い、邵可は少し困り顔で「すみません」と謝った。
「ちょ、春麗待ってよ!」
早歩きで廊下を渡り、自室に入る
「ねぇ春麗、何があったのよ?黄尚書がお迎え、ってどういうこと?」
もともと春麗は自分のことは話さないが…一体、自分が茶州にいる間に何が起こっているのか見当がつかなかった。
「あのね、秀麗…伝える機会がなかったのだけど、わたくし…いま、黄尚書のお邸にご厄介になってるの」
「・・・えぇぇぇぇぇえ〜〜〜???」
春麗は「う、るさ・・」と小声で呟いたが驚きすぎた秀麗の耳には届かなかった
「ね、ちょ、ちょっと、待って、春麗!いつの間に黄尚書とそんな仲になってたの??」
「へ?そんな仲、って?」
「だって、一緒に住んでるってことでしょ??黄尚書とお付き合いしてて、結婚するんじゃないの?」
「は、い?????」
盛大に頭に?がついた状態で春麗が聞きかえす
ちょっと考えて意味がわかって、クスクス笑いだした
「ないわよ、そんな話。お付き合いしているわけでもないし…配属になった時に、四部門兼務は大変だし、更に邸のこともやったら休む間もないから、って心配していただいて、お声がけいただいたのよ。多分、その前に倒れちゃったりしてたのもあると思うのだけれど…実際に…特に戸部は帰れないこともあるから、本当に助かってます」
「そうなの?」
(うーん、なんか春麗の雰囲気に、あの時の私と同じものを感じるんだけど?黄尚書じゃないのかな?でもたぶん、この話は事実で、春麗の言う通り、きっと"お付き合い"はしていないのだろう。だが…)
「ねぇ春麗、春麗は黄尚書のこと、どう思っているの?」
グッと秀麗が詰め寄ってくる
春麗は少し考えた。
(これは…きっと秀麗が聞きたいことはこの答えじゃないけど…)
「どう…って…あなたも知っての通り、お仕事は厳しいけれど的確だし、お仕事以外についても知っての通り優しいし気遣ってくださっているわ。黄尚書と…景侍郎もだけど、お二人には本当に良くしていただいて感謝してるわ。わたくし、もともと戸部希望だったしね。で、話を戻すけど、お邸にご厄介になっていて、夜は危ないからとお迎えに来てくださったの」
そう言って、用意してあった風呂敷を取った。
「あなたがこっちにいる間、邸のことお願いね。たまには帰ってくるわ。またお話ししましょ」
有無を言わさずスタスタと室を出る。
なんだかうまくはぐらかされた、とため息をついて、秀麗は後に続いた。