はじまりの風−1
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後宮に戻って自室で女官姿に着替える。
髪を結うのは面倒だったので高い位置でまとめて、適当に持ってきた簪を一本刺して、お茶を持ち、秀麗の室へ向かう。
「秀麗」
「春麗!どこ行ってたのよ」
「それより、王には会えたの?」
答えは知っているが、一応尋ねる。
「それが…”藍楸瑛”って名乗ったのよ?」
危うく、卓におこうとしたお茶をひっくり返しそうになった…
「なんでまた?」
「さぁ?でも、また朝に府庫でお茶をする約束をしたから、そのうちわかるでしょう」
ぶつぶつ言ってはいたが一度会えてしまえば、あまり気負っていないようにも見える。
「そうね」
と答えて、少しゆっくりした時間を過ごした。
翌日から、春麗は朝から侍童の格好をして、朝は府庫で邵可と一緒に「秀麗と”藍楸瑛”のお茶会」をこっそり見守り、それから戸部に向かうという時間割に変えた。
戸部では思ったより早く”天寿”が現れたので景侍郎に歓迎されていたし、仕事が終わると毎日褒めてもらえて、尚書から頭をぽんぽんされるのが嬉しくて気分良く過ごしていた。
数日後の朝、のお茶会は外だった。
木の陰に身を隠し、そっと伺っていると、秀麗の話している声が聞こえる。
「・・・私の家はねぇ、とっても貧乏なの」
ぽつりぽつりと話は続く。
この先の展開がなんとなくわかって、春麗は顔を顰めた。
「貧乏は慣れているわ。でも、絶対、こんなのはもう二度と耐えられない、っていう、最悪につらい時があったわ。」
春麗は目をつぶった。
「___8年前の、王位争いの時よ」
秀麗の話は続く。
あの時、秀麗はそれこそ必死で働いて、それでも街の人たちのためには大した役には立たなくて。最後は庭にある食べられるものは全て手放した。
春麗は、あの時にどんなに学があっても、武があっても、それを”役立てられない”と無意味であることが、骨身にしみるぐらい理解した。
「毎日四人で街中を走り回った。静蘭は力仕事に。父様は作物の確保に。私と春麗は診療所の手伝いに…」
診療所で、毎日たくさんの人が亡くなった。
秀麗は泣きながら二胡を弾いていた。
「だから、私は、王宮にきたの」
「・・・え?」
「あんな日々はもうごめんよ。だから霄太師の請を受けて、私はここへきたの」
真面目な秀麗は、霄太師から受けた仕事を、自分なりに考えたのだろう。
話す視線に迷いはない。
「その人の人生は、その人自身が選ぶもの。いくつもある選択肢を自分で選んで、生きていく。」
”春麗は、春麗の人生を歩むのじゃ”
(母様…わたくしはまだ、秀麗を守ることを選んでいます。それもまたわたくしの人生ではないのでしょうか?)
問いかけても、答えはない。
「私は、あなたを支えにきたのよ。あなたのそばで、王としてあなたが立つのを支えるために」
ハッと意識が戻る。
いつの間にか、秀麗は、秀麗の人生を見つけていた…
きっとまっすぐな秀麗のことだ、この先はその道を突き進むだろう。どんなに茨の道でも。
(わたくしの道は・・・どこなのかしら・・・)
「今の話、王に伝えてくれる?そしてね、もしやる気があるなら、今日の午後、府庫でお待ちしていますーって」
話は終わったらしい。
二人が去ったあと、ふぅ、と大きくため息をついて、春麗ha
その場に項垂れた。