白銀の砂時計−1
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「父様、春麗、静蘭、ただいま〜」
秀麗は邸に戻った
久しぶりの我が家でホゥっと息をつく。
「おかえり秀麗。静蘭は羽林軍の新年の宴に、白大将軍自ら迎えに来られて行ってしまったよ」
「あらそうなの?せっかく久しぶりにみんなで食事ができると思ったのに」
「私はさっき話ができたけどね。あの宴は一週間ぐらい続くから、いつ帰ってくるかねぇ?茶州に帰る前にその時間があるといいけれど」
邵可はあまり気にしていないように言う
「春麗は?」
「朝賀の時に会わなかったかい?」
「黄尚書たちと一緒にいたのは気がついたんだけれど、何せすごい人だったのよ。話をする暇もなかったわ。こんなことなら朝賀で会った時に何時に帰るか聞けばよかった。夕餉の支度するわね」と着替えに行く。
食事が出来上がる頃にふらりと春麗が戻ってきた。
「ちょっと春麗。どこにいっていたのよ!?」
と問い詰めようとする秀麗と、後ろで複雑な表情をしていた邵可が、春麗の姿を認めるなり二人とも口を開けて固まってしまった。
「秀麗、お帰りなさい。今日の朝賀、立派だったわよ?…どうしたの、二人とも固まっちゃって?」
「春麗…なんか急に大人びたというか…母様に似てきたわね?ね、父様?」
邵可はそっと目を閉じて在りし日の妻の姿を思い浮かべる。
それからもう一度目を開けて、春麗の姿を見た。
「いや…確かに元々面差しは似ているけれど…春麗は、春麗だよ。」
そう言ってから、薔薇の簪に目を止めた。
その視線に気がついた秀麗が聞く。
「あら春麗、素敵な簪ね、どうしたの?」
「そんなことより、茶州での秀麗の話を聞かせてほしいわ。あとは私が作るから、食事しながら話しましょう。」
と用意をしに行く。
前回、邵可に出したものと違う采を一品作って、食卓に並べた。
久しぶりに3人での食事だ。
(秀麗、気づくかしら?)
と思ったが、「美味しい」とは言っていたが、特に何も聞かれなかった。
それをきっかけに話そうかと思っていたので、肩透かしを喰らう。
気を取り直して、秀麗の話題に持っていった
「で、茶州州牧のお仕事はどう?」
「そうねぇ、あ、燕青も影月くんも元気よ。静蘭は一緒に帰ってきたけれど。父様が言うには、羽林軍の宴に呼ばれて出てしまったみたい」
「あっ!!」
突然、春麗が叫んだ。
「どうしよう、わたくしも呼ばれていたんだった…」
「春麗。あの宴は一週間続く。行くのはやめたほうがいい…」
邵可はげんなりとした顔で止める。
「そう、よね…明日にでもわたくしの名前でお酒を届けていただくことにするわ。絡まれても面倒だし」
「それがいいね」
邵可は安心したような顔になった。
「それから、鄭州尹のお仕事ぶりはどう?」
「春麗が時々、燕青を介して文のやりとりをしていたのは、悠舜さんだったのね。悠舜さんはほんとうにすごいわよ。あの黄尚書の上をいく方、というのがよくわかるわ。あの方の近くで学ばせてもらえて、とても感謝してる」
「そう…それはよかったわね。貴陽にいる間にお会いできるといいけれど」
「仕事の件で黄尚書に面会を申し入れると言ってたから、機会はあるんじゃないかしら?奥様とご一緒よ」
「お文でご結婚されたと書いてあったわ。同期の尚書方が驚いていらして、ちょっとした話題になっていたのよ」
”同期の尚書方”で思い出したのか、秀麗の顔つきが変わった
「ねぇ、工部の管飛翔尚書、ってどんな方?黄尚書が”酔いどれ尚書”って言ってた方だと思うんだけれど、少し工部を説得しなければいけない案件があって」
邵可と春麗は顔を見合わせる。
「そうね…工部攻略は難しいと思うわ。まず、あそこが最後まで女人官吏に反対していた。尚書、侍郎ともにね」
「あぁ、それは悠舜さんも言ってたわね」
「ただ…彼らがきちんと納得できるように説得できれば、誰より味方になってもらえると思うわ。理屈を無視して感情で反対しているわけではないと思うの。話を聞いてもらうまではものすごく大変だと思うけれどね。一度でも引いたら、そこまで見限られるわ」
いつぞや、ハンコをもらうのに飲み比べた自分の体験を思い出しながら話す。
「ありがとう、もう押して押して押しまくるしかないわね!」
相変わらずな秀麗に、邵可も春麗も目を細めた