白銀の砂時計−1
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春麗は新たな年を鳳珠の邸で迎えた。
簡単に家人たちと新年の挨拶を済ませる。
瑞蘭からは「お館様お一人だから、特別なことはあまりしないのですよ」と言われていたが、もともと邵可の邸でも餅つきぐらいしかしていたなかったので、あまり違和感を感じずに、ただし自分の邸とは異なる風習を興味深げに見ていた。
朝賀のために出仕する前に、鳳珠に呼ばれて室に顔をだすと、コトリ、と小さな箱を渡される。
「前に話した通り、他の官吏には年賀として酒を届けているのだが…代わりというわけではないが、春麗にはこれを受け取ってほしい」
開けると、金の簪、小さい薔薇の花が鞠のように組まれていて、その下に紅玉と金の玉簾
春麗は大きな目を見開く。
「こんな、立派なもの…いただくわけには…」
「私が春麗に付けていてほしいと思って作らせた。受け取ってくれ」
どうしよう、とは思うものの、お返しするのも失礼だと思い、
「…ありがとうございます。大切に、しますね」
と答えると、鳳珠は満足げに頷いた。
じっと見ているとじわじわと嬉しさが増してくる。
少しずつ嬉しそうにしている春麗を見て、
「私が挿してやろう」
と言って、鳳珠が背後に回り、簪を受け取って高い位置で編み込んだ髪に挿す
きちんと調節して位置が定まるとすっと目を細めて言う。
「よく、似合う。綺麗だ」
「ありがとうございます、鳳珠様…こんな立派なものをいただいて、わたくしは何もお返しができません…」
「お返し、か。いらない、と言ってもお前は気にするのだろうな」
想像して喉の奥でくつくつと笑う
「だったら…そうだな、普段からつけてくれると私は嬉しいが?」
春麗が見上げてきたので、少し眉を上げて春麗の前髪をそっと撫でながら目線で促してみる。
「そう、します…本当に…嬉しいです、ありがとうございます」
まさに花が綻ぶような微笑みに、鳳珠は目を奪われた。
室の外で様子を伺っていた家令と侍女頭が心の中で(御館様しっかり!!)と見守っていたのは言うまでもない。