茶都・月の宴−2
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(一体どんな大惨事になっていることやら…こんなことなら月に一回ぐらいマメに帰っていた方がよかったかしら)
少し気が重くなりながら、実家の門を潜る。
邸の中に入ると、それはそれは綺麗に片付いていた。
「いえ?まちがえた???」
思わず声に出してキョロキョロしていたら、
「春麗、おかえり」
と邵可が出てきた。
「父様、これは一体…?」
「昨日、府庫で春麗が片付けに帰る話をしただろう?その後に黎深が来て、そのことを伝えたら”春麗にそんな大変な思いをさせるなら自分が”と人をよこして片付けてくれたんだよ」
ニコニコと邵可が答える
「そう、だったの…黎深叔父様にお礼を言わなくては。新年に秀麗も戻ることだし、一通り確認するわね」
「あ、黎深は”春麗の采が食べたい”と言っていたので多分午ごろにくると思うから、何か作ってくれるかい?」
「お礼にそれぐらいしないといけませんわね。では、点検が終わったら買い出しに行って準備しますわ」
邸の中はどの室も綺麗に片付いていた。
秀麗の室を冬支度に変えて、自分の室へ戻る。
真冬の衣を3つほどと、帰りの準備をしてから、鳳珠への手紙を書いて持って出る。
買い出しに向かう時に手紙を黄邸へ送り、食材を買い込んで邸へ戻り、準備を始めた。
その頃鳳珠は、春麗が実家の片付けで不在、年末で仕事もさして忙しくないということで、邸で新年の用意をしていた。
家族がいるわけでなし、邸で行う新年の行事はほぼ家令と家人に任せきりだが、いつも戸部官たちには年賀として酒を取り寄せて送っている。
そろそろそれを選ぶ時期が来た。
普段の買い物は邸に呼んで済ませるが、この新年の贈り物だけは鳳珠が貴陽にある黄家がもつ酒屋の中で一番いい酒を扱っている店へ足を向け、その年の一番出来のいい物を自ら選んでいる。
信用していないわけではないが、日頃無理をさせている戸部官たちへの、鳳珠なりのせめてもの誠意だ。
夕方に酒屋に寄ってから邵可邸へ向かうつもりで他の準備を家令と話していたところ、家人が春麗からの文を持ってきた。
そういえば、春麗から文をもらうのは、国試及第の祝いの文を送った時の礼でもらった時以来か。
もはや少し懐かしくなった感覚に口角を上げながら中を開く。
手紙には、黎深が手を回して片付いていたこと、暗くなる前に帰るから迎えはいらないということが書いてあった。
「予定繰り上げだな」
これもまた、文を交わしていた時に使っていた、ほぼ春麗専用になっていた薄黄色の料紙をとり、返事を書く。
(さて…)
立ち上がり庭院に出る。
目当ての花を自ら選び、家人にことづけ、出かける準備をはじめた。