茶都・月の宴−2
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あっという間に年末が近づいてきた
(そういえば、帰るね、と言いつつ、結局一度も帰ってなかった…)
食後の鳳珠とのお茶時間に、新年まであと何日か数えながら、父様に会ったのはいつだっけ?と春麗は思い出す
書翰渡しのついでか府庫への返却がある時に寄るぐらいで、よく考えたら吏部尚書補佐の仕事以外でもしょっちゅう戸部や鳳珠様のお邸に突撃してくる黎深の方が週に何度も会っている
(秀麗が茶州から朝賀で戻ってくるというから、片付けに行かないとね)
鳳珠は春麗が上を向いて考えたり、眉間に皺を寄せたりして百面相しているのを、声に出さずに笑って見ていた。
結論が出たのかスッキリした顔になったのを見て
「考え事は終わったか?」
と聞く。
「え?鳳珠様、よく分かりましたね?」
意地悪そうに口角を上げながら
「何やらいろんな表情をしていたからな」
と伝えてみる。
「いやですわ、ひどい」
春麗は口を尖らせてプイッと横を向いたのでつい笑ってしまった。
「すまない、で、何を考えていたんだ?」
「…もうすぐ、新年だと思いまして。こちらにお世話になるようになってから、そういえば一度も帰っていなかった、と…鳳珠様は時々帰らなくていいのかとおっしゃってくださってましたけど、居心地が良くてこちらに甘えてしまっていました」
そう、なのだ。
春麗は子供の時に通っていたため”黎深と二人で”過ごすことはあっても、”邵可と二人で”過ごしたことがほとんどなかった。
そして今となっては”鳳珠と二人で”過ごすことが普通になっている。
(実の父なのにね・・・)
「秀麗が朝賀で帰ってくるというので、片付けにいかないと…父様は生活能力が著しく低いので、邸が本格的な廃墟になっている可能性が高いんです…」
はぁぁ、と春麗は珍しく盛大にため息をついた
「というわけで、明後日の公休日に、片付けに帰ろうと思います」
鳳珠は少し考えてから
「そのまま向こうに泊まるのか?」
と聞いてきた
「えっ?…あの、片付けは一日かかると思いますけれど…夜はこちらに戻るつもりでいました…いけませんか?」
なんだかいけないことのような気がして、春麗は恐る恐る尋ねた。
鳳珠は満足げに微笑みながら答えた。
「いや…構わない…帰ってきてくれるのは嬉しい。ちょうど、出かける仕事があるから帰りに迎えに行こう」
「大丈夫ですよ、歩いて帰れますし」
「冬の夜道は危ないから、迎えに行く。おとなしく待っているように」