茶都・月の宴−2
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事件の後の羽林軍指南の日は、武官の送り迎えついた。
皐武官は春麗が戦った相手を楸瑛と一緒に捕縛していた若い武官だ。
「あの日を境に、”姫を守る会”ができたんですよ」
ニコニコと笑いながら皐武官が話す。
初めは楸瑛が行くと言ったらしいが、両大将軍から「これ以上、戸部と揉めたくないからやめろ」と言われてたことと、”姫を守る会”から大反対されたことで皐武官に白羽の矢が立ったという。
「まぁ、そうなんですの?」
「紅官吏なら自分で倒せてしまいそうですけどね、そこは武官の矜持と言うことで察してください。それから…」
と戸部へ戻るときに、風呂敷に包まれた羽林軍から文の束を皐武官が渡した。
「武官たちからの恋文、らしいです。でも、恋文というよりはどうも聞いていると内容は手合わせをお願いしたいとかそんなことみたいですよ?黒白大将軍と宋太傅が自分を倒してからでないと挑戦権は与えない、と阻止してますが」
「まぁ、そうなんですか?お返事は出せないと思いますし、手合わせはできませんが読ませていただきます、とお伝えください」
突き返すわけにもいかないので受け取る。
風呂敷いっぱいの文を見て鳳珠と柚梨がギョッとする。
「なんでも、皐武官がおっしゃるには、恋文というより挑戦状のようですわ。両大将軍と宋太傅が自分に勝ったらと勝手に言っているみたいですけど、まぁ勝てる方はいないので大丈夫でしょうし、受ける気もありませんからね。お返事はかけませんけれど読ませていただきますとお答えしましたわ」
と涼しい顔で説明した。
「最近、他からも春麗ちゃんに恋文が届くようになって私は心配ですよ」
「よく存じ上げない方からいただいても困りますよ?でも、世間的には”適齢期”に入ってきているんですよね…」
これから起こることを想像してため息をつく。
「春麗ちゃんは結婚したいですか?」
「…いずれはきっとしないといけないでしょうね。父や黎深叔父様は紅家嫌いですし、特に黎深叔父様は私や秀麗に関してはおそらくお見合いの話を端から潰していると思いますが、紅家第一なもう一人の叔父が黙っているとは思えないので…はぁ」
いかにもげんなり、とため息をついたのを見て、柚梨は少し考えて口を開いた。
「それでしたら、春麗ちゃんにもし好きな方がいらしたら、その方と結婚したい、と言えばいいじゃないですか!」
「へ?」
春麗はパチパチと瞬きをして首を捻る。
「紅家直系となるとなかなか難しいのかもしれませんが…でもね、こればっかりは一生のことですから、春麗ちゃんがどうしたいか、がまず大切だと思いますよ?」
柚梨の言葉に、春麗はまたパチパチと瞬きをして黙ってしまった。
そして柚梨がチラリと鳳珠を見ると、何も言わずに春麗を見つめていた。