茶都・月の宴−2
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鍛錬場に不似合いな紅と黄色の官服を着た男が二人入ってきた。
鳳珠は戦う春麗を見て目を見張る。
黎深はチラリとその表情を見て。そのまま鳳珠の手を引き中に入っていく。
黒大将軍がそれに気付き
「おい」
と白大将軍に声をかけ視線で知らせた。
だいぶ近づいた、ただし攻撃は受けない位置で黎深は立ち止まったので、鳳珠も足を止める。
春麗は体格が3倍以上ある大男と互角に戦っていた。
それ以前に倒されたと思われる者たちは藍楸瑛ともう一人の武官が縛って見張っている。
かなりな速度で大男の攻撃を交わして回り込んだりしているが、如何せん力不足らしく決定打にはならずに、相手に少しずつ傷を負わせているだけだった。
(鉄扇一本で勝てるか?)
手を出すべきかだいぶ迷っていたが、黎深が相変わらず鳳珠の手を掴んでいるので動くに動けなかった。
だいぶ大男のダメージが大きくなってきたところで、振りかぶられた刃を鉄線で受け止めるも、添えていた左手を前の攻撃で痛めていたのか力が足りずにガクッと膝をつく。
「くっ!!」
少しずつ右に体をずらして抜けられる角度になったときに、黎深は鳳珠の手を離し、懐へ入れた。
「春麗!」
「右へ飛べ!」
黎深と鳳珠の声に、大男が少し気を取られた隙に右へ身体を抜き、さっと間合いを取るべく飛んでから、大男の肩に乗るべく上に跳び上がった。
シュッ!という音と共に、黄色い光線が二本、黎深と鳳珠のいる方向から飛んでくる。
(叔父様と鳳珠様から光線が!?)
春麗は大きく目を見開いて上から見ていると、二本の線は大男の額と腹に当たり、後ろへ吹っ飛び、春麗はそのまま着地した。
楸瑛が慌てて縄をかけにいく。
春麗は「一体、何が…?」と黎深と鳳珠のいた方を見やったが、目の前の視界は紅に塞がれた。
「春麗!!」
どうやら、黎深に抱きしめられているらしい、と気がついたのは一拍おいてからだった。
「大丈夫か、春麗」
横から鳳珠が声をかけるが、黎深はそのままぎゅうぎゅうとしている。
「春麗、左手を怪我しているだろう?」
紅い衣から出ている左手を鳳珠がとる
黎深がぱっと腕を離した隙に隠そうとしたが、有無を言わさず鳳珠に引っ張られ、袖を捲られる。
白い肌に痛々しい青いあざができていた。
「他は大丈夫か?すぐに医務室に行こう。だがその前に…」
鳳珠と黎深は大将軍の方へ足を向け、話しかける。
「羽林軍で破落戸を雇っているとは知らなかったな。兵部も含めて身元の確認と監査が必要なようだが?」
黎深は自分の扇をパシン、と音を立ててならす。
「勝負の類は禁止と申し入れをしておいたはずだが…春麗を辞めさせるために挑んだものとも思えんな」
鳳珠は冷たく言い放つ。
「紅尚書、身元確認と査察については兵部に申し入れて進めていただきたい。禄の調整も必要になるだろうから、結果は戸部まで」
「わかった。今回の件、言い訳は一切聞かない。大将軍方もそのつもりで。そこで見ている宋太傅、よくお二人に言い聞かせておいてくださいよ。貴方は春麗の後見人なのですから」
黎深と鳳珠は言うだけ言って踵を翻した。
「春麗殿、手助けできなくてすまない」
楸瑛が大男に当たった扇を持って春麗に渡しに来た
「いえ、後ろから牽制していただいていたので十分でしたわ。ありがとうございます。この男も私が倒したかったのですけれど」
「この扇ともう一つ何かが当たっていたようですね」
楸瑛を助けていた武官が口を挟む
「彼は皐 韓升、私の部下で将来有望なんだ」
「ありがとうござました、皐武官」
春麗は礼をとってから向きを変える。
大将軍に向かい「本日はこれで失礼いたします。また二週後に」と言い、黎深の方へ歩いていく