茶都・月の宴−1
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「え?茶州組がバラバラ?どういうことですの?」
週1回吏部での朝お茶…もとい、吏部尚書補佐の時間。
春麗はお茶を飲もうと伸ばした手を止めて、黎深を見た。
「報告によると、秀麗とその他、に別れてしまったらしい。秀麗は全商連の隊に紛れているらしいが」
「黎深叔父様が”鴛鴦彩花”の通行手形に少し細工をされたと…鳳珠様から伺いました。渡すときは知らなかったので、秀麗には何も言わずに黄尚書からと言って渡していますが」
「それでいい。どうせ全商連から紅家当主と当主名代から、という話はされるだろうが、そこは構わん。秀麗は玖琅と会っているから、玖琅を思い浮かべるだろう」
面白くなさそうに黎深は言う。
「そう…ですわね。秀麗はなんとなく自分の力で道を切り拓いていけると思いますけれど、そう言ってもわたくしと違って武力は全然ですし、破落戸なんかに襲われたら心配ですわ。他の4人も、さらに別れていないといいけれど」
気の重いため息を一つついて、すっかり冷めてしまったお茶を飲んだ。
その夜。
「春麗は?」
仕事が遅くなり、月が中天に近くなる頃に邸に戻った鳳珠が尋ねる。
「それが、その…」
春麗付きで侍女頭である瑞蘭の返事の歯切れが悪い。
「まさか、帰ってないとか?」
「いえ、そうではありません!ただ、ちょっと様子がおかしくて…お食事までは様子の変わったところは無かったのですけれど、入浴中になかなか出て来られないので、お声がけをしたのですけれど、それでもなかなか出て来られなくて…3回目ぐらいでようやく出て来られたのですが、ずいぶん泣かれていたのか、真っ赤な目をされていました」
瑞蘭は少し考えながら話す
「どうされました?と伺ってもお首を振るばかりで。とりあえずお風邪を召されるといけないので、お着替えとお髪のお手入れはお手伝いしたのですが、そのままお室に入られれ、今日はもういいから、と…」
「ふむ…」
「先ほど、様子が気になってこっそり見に行ったのですが、灯りも一つだけ残してあとは落としていらして。寝台の隅に座っていらっしゃる様子が見えました。ちょうど月明かりが入り込んでいたので、それで。」
鳳珠は春麗が泣いていた理由に思い当たらないわけではなかった。
ただ、昼間は特段変わった様子もなかったことを思い出しながら、
「そうか…あとで一度様子を見ておく」
と告げて浴場へ向かった。