茶都・月の宴−1
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案内されたのは庭院の前の室だった。
「お邪魔します」
と言って入ったら、侍女に笑われてしまった。
そんなに広くはないが、使い心地の良さそうな趣味のいい調度品に囲まれていた。
(前に来た時も思ったけれど、鳳珠様って趣味がいいのよね)
あからさまではないが、質の良いものに囲まれている
(ぼろっとしてるうちとはえらい違いだわ…)
なんとなく様子を見ていた春麗に、侍女が声を掛ける
「私、瑞蘭と申します。姫様のお世話をさせていただくことになっております。よろしくお願いいたします。他の姫様付きの侍女は、追ってご紹介しますわ」
「あ、よ、よろしくお願いいたします、瑞蘭さん。あの…わたくし、大概のことは自分でできると思いますので、お気遣いなく…」
紅家といえども貧乏紅家で育った春麗は、母親が亡くなった時に家人は静蘭を残して全て出て行ってしまったため、誰かに傅かれて生活をする貴族のお姫様の育ちではないのだ。
(鳳珠様もそれはご存知のはずなのに…)
「”瑞蘭”で結構です、普通、姫様は使用人に対してさん付けはしないものですよ。それに姫様はこれからお仕事が大変お忙しくなると伺っておりますから、せめてお邸にいる時ぐらいは寛いでいただきませんと」
「あの、その、わたくしも”姫様”もできればやめていただけると…」
だんだん居た堪れなくなってきて、小声になってしまう
「まぁ、姫様は随分奥ゆかしくていらっしゃいますわね。まさに姫様とお呼びしたいところですが…そうおっしゃるなら、春麗様とお呼びさせていただきますわ」
(様、もいらないけど、まぁいいか…)
「ありがとうございます。あと、わたくしも鳳珠様のお手伝いもさせていただくつもりですし…」
「それは御館様が喜びますわ」
嬉しそうに瑞蘭が笑顔になる。
「早速お着替えをして、お食事にしましょう。そろそろ御館様が待っていらっっしゃる頃です」
「あら大変、急がないと」
慌てて準備を始めた。