生まれた時のお話

 ――あるところに一匹の子犬がおりました。

「あれ?一体ここはどこだろう?」
「僕はどうしてしまったのだろう?」

 子犬はここに来るまでの記憶がありません。
 するとどこからともなく一人の人間が現れて、声をかけてきました。

「こんにちは!」
「こんにちは。きちんと挨拶が出来てえらいですね」
「えへへ」

 子犬は褒められて嬉しくて尻尾を振ります。
 すると現れた人間はこう言いました。

「良いですか◯◯よ。貴方は死にました」
「えっ」
「大きな波に運ばれてここまできてしまったのです」

 人間にそう言われ、子犬はだんだんと何が起きたのか思い出してきました。

 ガタガタと大きく揺れる家具。
 女の人の悲鳴。
 けたたましいクラクション。
 押し寄せる真っ黒な水、水、水――。
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