1ヶ月目

 私はこういった非日常に耐性があるわけでは無いし、命が失われる場面というのは、死を目の当たりにするといった場面はとことん駄目なのだ。
 父や祖父の通夜や、火葬を終え納骨した時の事を思い出してしまうから。

「……ねぇ螟「さん?」
「…………」
「前にさぁ、『カラッカって何でも食べるんだよ』って教えたじゃないですか」

 反応は鈍くなるものの、彼が言っている言葉に嫌な予想をしてしまう。

「ほら、カラッカのことよく観察してみた? 特にこの口のあたり・・・・・とかさぁ?」

 よいしょと小さく声を漏らし、彼が植木鉢を持ち上げた事が分かった。
 きっと私に見てもらう為に目の前に運んでくる事だろう。

 見たくない。知りたくない。恐い。いやだ。
 でも、もしこれが本当に・・・・・・・・カラッカが猫を・・・・・・・食べたという証拠・・・・・・・・や証明になるのだとしたら・・・・・・・・・・・・

 顔を背けて見る事を拒否をしていたが、抑えきれない好奇心と興奮に我慢が出来ず、ついつい視線を彼が運んできたカラッカの方へと向けてしまう。
 向けてはいけなかったのに、向けてしまった。

「、」
「ほら、ね?コイツなんでも食べるでしょ?」

『口みたいだ』と表現した花芯にこびりついている猫の毛。
 花弁を汚す血。
 風も無いのにご機嫌に動くカラッカ。

 私は今、一体何を目にしているのだろう・・・・・・・・・・・・・・

 意識が真っ黒く塗りつぶされる前に聞こえてきたのは、心底愉快そうに笑う縺ッ繧九″お兄さんの悪魔に似た笑い声だった――。
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