短編・旧サイト拍手ログ


時計の針がゼロをさしたような気がしてまぶたを持ち上げてみてもあいかわらずそこにはしみるような青空があるばかりで心の底からがっかりした。

私は脱力してため息をつく。

だれもいない学校の屋上に大の字になって寝転がっているのは私だけだ。

だって今は授業中だし、

それに生徒は基本的に屋上への立ち入りを許されてない。

私は禁を破って、今のところ私にとっての世界で一番高い場所にいるわけだ。

私は目を閉じて駆け抜ける微風の音に耳をすました。

そして鼻で笑う。

何度やっても同じだ。


破滅に向かって時を刻む時計をいくら想像したって、

すべてが無にかえってしまうゼロを想像したって、

私の目の前の世界は消えてくれない。


いや、別に消えてほしいわけじゃないんだけど。

本当に世界の終わりとか破滅を望んでいるわけじゃあないんだけど。

ただ、

青空がなんとなく憎いだけなんだ。


視界の隅で、雲がのんきに右から左へと進路を進めている。

私は何をするでもなくその決して生き物にはなれない白い生き物みたいなやつを眺めていた。

時間が経つにつれて、雲は徐々に移動していく。

天空で風が吹いているせいか足取りは快調で、

あっというまに雲は私の世界からはみだして遠く彼方へと行ってしまった。

そして残ったのは、澄みきった青空。

それから無駄に消費したいのに私の思い通りにならない時間も。

人生っていう制限時間つきの遊戯もおまけに付いてきてる。


もう一度息を吸って、

身体の中からあらゆるものを追い出すために長く長く息を吐いた。


澄みきった青空にはわからない。

わかるわけない。

けがれのないあなたにはわかるわけない。

私の気持ちなんて。


でも、

私かあなたがどこかへ行ってしまえばそれですべて解決するのよね。

私が投げ出そうかしら。

あなたと、この世界を。


それはすごくいい思い付きのような気がして愉快になったから、

誰にともなく、

私はにやりと悪意ある笑みを浮かべた。



〈了〉  ネット初出 2008.2.28
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