Prelude 2


そこで真守は、うーんと複雑そうにうなった。

「どうしたんだ? 真守」

『いや、どうして俺はそういうことを感じないで、お前ばっかり敏感なんだろうか、って思ってさ』

真守の疑問はもっともだった。彼は弦稀に出会う前、弦稀が感じたような胸のざわめきも、石が何かを訴えてくるような感覚も、何一つなかったらしい。だから彼は、弦稀が自分の石と力を目の前で見せた時は、たいそうおどろいたものだ。

「さあ、俺もそこまではわからないけど……」

『ああ、まあそうだよな。そもそも、どうして俺たちが生まれつきこんな力を持っているのか、誰もわからないし、知らないんだもんなあ』

真守は非常にあっさりとした口調で、ため息交じりに言う。しかし彼がそうやって、自分の力に関して屈折した思いをあまりはさむことなく口にするまでには、誰にも計ることができない長い葛藤があったことを、弦稀は察していた。

だから、かける言葉が見つからなくて、一瞬押し黙ってしまう。

『あっ、ま、まあ、思い悩んだってしょうがないよな! 今まで何とかなってきたし、これからも何とかなるよな!』

真守がわざとらしく前向きなことを言う。弦稀は、そうだな、と返しておいた。

『わ、悪い。何かまた、暗いこと言っちまって……』

「いや、大丈夫だ」

弦稀は話題をすり替えようと、頭をめぐらした。このままこの会話を続けてしまえば、二人ともが引きずられてしまうと思ったからだ。弦稀は強く意識して己を保とうとはしているが、やはり自分が他者と完全に異質であると意識するたび、どうしようもなくいらだってしまう。

考えるのはいいとしても、深く考えすぎて戻ってこれなくなるのは問題外だ。


とりあえず弦稀は、明日から学校内や町内を探索する旨を真守に告げた。真守は、自分も出来る限り同行すると申し出て、それで電話は終わった。

受話器を置くと、年の離れた妹がぱたぱたと駆け寄ってきて、弦稀の足にぎゅうっと抱きつく。

「おにいちゃーん、一緒にテレビ見ようよー?」

「ああ、わかったから、莉々香、今行くよ」

くいくいっと服をひっぱってくる妹をなだめながら、弦稀は居間に戻った。テレビの向こうでは、自分とあまり年齢の違わない双子の兄妹が、司会者との談笑に花を咲かせている。

莉々香は、若くして芸能界の若手スターにのしあがった二人を見てきらきらと目を輝かせていた。

「すごいねー、このお兄ちゃんとお姉ちゃん」

テレビへよっていこうとする妹を引きとめて膝に乗せながら、弦稀は機械的に同意した。

「そうだな」

「いいなあ。テレビに出れるなんて、うらやましいなあ」

弦稀は、司会者からのきわどい質問を笑って受け流している、全く面識のない兄妹を見る。画面越しの虚像。

(特別っていうのは……他から外れているっていうのは、疲れるよな)

妹がテレビへと無邪気にまなざしを注ぐのを見ながら、弦稀は複雑な思いに駆られていた。







そして、少年たちと少女たちはやがて出会うこととなり。

その出会いが、避けることのできない運命への幕開けとなったのだ――
2/2ページ
スキ