Stage 2
形は同じだが、色の違う石。〈風〉と〈鋼〉。
弦稀は、月子の目をひたと見据えた。
「さっきは助かった。ありがとう」
「え……あ」
少年を追い払ったことを言われているのだと悟って、気恥ずかしくなり、妙な心地にもなった。気に食わないと思っていた相手に、まさかこんなことを言われるとは。
「私こそ、助けてくれてありがとう」
弦稀がいなければ、自分はあの少年に痛めつけられていただろう。無邪気に腕をねじってきた彼を思い出し、鳥肌が走る。
「……そういえば、さ」
いきなり身命の危機にさらされたので、深く考える余裕がなかったが。
「さっきの男の子、何だったの?」
「さあな」
「妙な仮面してたし。顔を見られるのが嫌だったのかな? それに、普通の人間じゃないみたいだった。私たちとはまた違うだろうけれど、あの身のこなし方、異常だよね……」
それに、一番最初、耳元でこう囁かれたのだ。
「見つけたって……どういうこと?」
「さあな」
立ち上がり、自分たちの鞄を探し始めた弦稀に、月子は眉をしかめる。
「もう少し、真剣に考えた方がいいんじゃない? また今みたいな目に遭うかもしれないんだから」
「悩むくらい、後からいくらでもできるだろ。今はお前の手当ての方が先だ」
鞄を両手に持って戻ってきた弦稀は、当然のように言い放つ。
(あれ、もしかしてこいつ、一応良い人なの……?)
あるいは、どこか鈍いのか、それとも肝が座っている、というべきなのだろうか。
その段になって月子は、相手の名前を知らないことに気がついた。
再び立ち上がり、歩き出す前に思い切って尋ねる。
「あ、あのさあ、あんたの名前、なんだっけ?」
数瞬遅れて、少年は言った。
「……そういえば、俺もお前の名前、覚えてないな。名字だけなら、真守が何度か言ってたけど」
「ああ、そうなの……」
よくそれで、今まで会話していたものだ。月子が改めて名乗ろうとした時。
「見つけた……」
後方から響いた声に、一気に緊張が走る。
弦稀は月子をかばうように立ち、手に槍を出現させた。月子も、せめて弦稀の足手まといにはなるまいと、気合を入れ直す。
二人の前に現れたのは、一人の青年だった。
年は、十七、八といったところだろうか。短く切りこんだ髪に、風雨よけの外套を着こんでいる。旅装束であるらしいが、まったく汚れていない。それが少し、奇妙だった。
穏やかな印象の青年は、月子と弦稀を交互に見、突然その場に跪いた。片足を立て、頭を垂れたまま、彼は感極まったように言う。
「やっと見つけました。行方知れずの、見えなかった星よ。僕はあなた方を迎えに来たのです」
再び顔をあげ、ほっとした表情を見せる青年。月子と弦稀は、思わず顔を見合わせた。
自分たちを取り巻く状況が、まったく理解できない。
そして月子は、とても率直な疑問を口にした。
「もしかしてここって……地球じゃなかったり、するのかな?」