🦊花狐風月(着物カラスバ×主)
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「ほな行こか」
そう言って微笑む姿は、さっきの泡を食った様子と打って変わって別人のようだ。
菫色の羽織りを羽織って落ち着きはらっている。私と違って一人の間にしっかり気持ちを切り替えたのだろう。
「ここの人がわざわざお店の予約までしてくれはったみたいや。上手くいくよう見張られとるみたいで緊張すんなあ」
「あー…、すみません。居心地悪いですよね」
「オマエが謝ることちゃうやろ?オレももう慣れてきたわ」
食事の間、カラスバさんは、言い伝えの話題を避けてくれていた。ちょっとだけ、助かったと思った。
「どこにいても仕事ができるのは困りもんやなぁ。若いモンに見られてないと気が抜けてもうて。気を抜いてるところをジプソに見られたらどないしよ」
「私はやること無くて暇で。野生ポケモンがいないのは変だけど静かで落ち着く所だなって」
「ミアレに戻ったら寝惚けたことも言ってられんくなるわ」
ミアレに戻る。私の胸が弾んだ。
「私は早く戻りたいな。ホテルもデウロとピュールに任せっきりだし…」
「お客さんおらんやん」
「たまに来るんです!居なくても賑やかだし!」
「目立たんところにひっそり建っとるからや。うちを見てみい、自己主張って大事やで」
「そういうのAZさんぽくない」
「あのじいさん、ただでさえでっかくて目立っとったもんな」
3000歳と言われたAZさんにまつわる伝説的な噂話、市長のやり方、新しいビル。
ミアレの風景を思い浮かべると楽しい食事になった。…カラスバさんを誘ってよかった。
「元気出てきたみたいでよかったわ」
と言われ今までずっと元気をなくしていたことに気付く。
「オマエが元気無いと調子狂う」
「すみませんでした…」
「ま、しんどいやろうけど好きなもののことでも考えときや。そういうもんがいざって時に救ってくれるんや」
ああ、わかる気がする。
私がここへ来た時にポケモン達のことを考えていたみたいに。
カラスバさんもそういう大事なものに助けられたことがあるんだろうか。
ヒントでも無いかとちらりと顔を盗み見る。カラスバさんがいつものように口の端をすこし上げて真っ直ぐこっちを見る。…これじゃ分からないな。
本音を隠すのも、平気そうに振る舞うのも、私よりもずっと上手いんだ。
少しだけ寂しくなった。
なんとなく沈んだ思いになり、帰り道は静かにカラスバさんの隣をただ歩いた。
風が柳の木を揺らして私の肌を撫でていった。
「楽しくなかった?」
カラスバさんがお屋敷の前で立ち止まり尋ねた。
楽しかったけど寂しくなった。とは言えず黙って首を横に振った。
「…ああ、別に無理して明るく振る舞わんでもええから」
私は気遣いに甘えて沈黙を守った。
「オレは楽しかったけどな」
あ、まただ。胸が痛くて言葉に詰まる。彼の言葉をなぞって私も楽しかったと返したいのにそれを口にする勇気がない。
「今日はここでお別れするけど次は部屋の前までちゃんと送るから。セイカからデートのつもりで誘ってや」
おやすみ、と言って去ってくカラスバさんに楽しかったともまたともお休みと言うこともできず見送った。
そう言って微笑む姿は、さっきの泡を食った様子と打って変わって別人のようだ。
菫色の羽織りを羽織って落ち着きはらっている。私と違って一人の間にしっかり気持ちを切り替えたのだろう。
「ここの人がわざわざお店の予約までしてくれはったみたいや。上手くいくよう見張られとるみたいで緊張すんなあ」
「あー…、すみません。居心地悪いですよね」
「オマエが謝ることちゃうやろ?オレももう慣れてきたわ」
食事の間、カラスバさんは、言い伝えの話題を避けてくれていた。ちょっとだけ、助かったと思った。
「どこにいても仕事ができるのは困りもんやなぁ。若いモンに見られてないと気が抜けてもうて。気を抜いてるところをジプソに見られたらどないしよ」
「私はやること無くて暇で。野生ポケモンがいないのは変だけど静かで落ち着く所だなって」
「ミアレに戻ったら寝惚けたことも言ってられんくなるわ」
ミアレに戻る。私の胸が弾んだ。
「私は早く戻りたいな。ホテルもデウロとピュールに任せっきりだし…」
「お客さんおらんやん」
「たまに来るんです!居なくても賑やかだし!」
「目立たんところにひっそり建っとるからや。うちを見てみい、自己主張って大事やで」
「そういうのAZさんぽくない」
「あのじいさん、ただでさえでっかくて目立っとったもんな」
3000歳と言われたAZさんにまつわる伝説的な噂話、市長のやり方、新しいビル。
ミアレの風景を思い浮かべると楽しい食事になった。…カラスバさんを誘ってよかった。
「元気出てきたみたいでよかったわ」
と言われ今までずっと元気をなくしていたことに気付く。
「オマエが元気無いと調子狂う」
「すみませんでした…」
「ま、しんどいやろうけど好きなもののことでも考えときや。そういうもんがいざって時に救ってくれるんや」
ああ、わかる気がする。
私がここへ来た時にポケモン達のことを考えていたみたいに。
カラスバさんもそういう大事なものに助けられたことがあるんだろうか。
ヒントでも無いかとちらりと顔を盗み見る。カラスバさんがいつものように口の端をすこし上げて真っ直ぐこっちを見る。…これじゃ分からないな。
本音を隠すのも、平気そうに振る舞うのも、私よりもずっと上手いんだ。
少しだけ寂しくなった。
なんとなく沈んだ思いになり、帰り道は静かにカラスバさんの隣をただ歩いた。
風が柳の木を揺らして私の肌を撫でていった。
「楽しくなかった?」
カラスバさんがお屋敷の前で立ち止まり尋ねた。
楽しかったけど寂しくなった。とは言えず黙って首を横に振った。
「…ああ、別に無理して明るく振る舞わんでもええから」
私は気遣いに甘えて沈黙を守った。
「オレは楽しかったけどな」
あ、まただ。胸が痛くて言葉に詰まる。彼の言葉をなぞって私も楽しかったと返したいのにそれを口にする勇気がない。
「今日はここでお別れするけど次は部屋の前までちゃんと送るから。セイカからデートのつもりで誘ってや」
おやすみ、と言って去ってくカラスバさんに楽しかったともまたともお休みと言うこともできず見送った。