「私お嫁に行くので」カラ主
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「セイカおかえり、オレも今仕事終わったとこ。休憩しよ」
戻るなりカラスバさんの歓迎を受ける。今一番顔を見たくて、一番会いたくない人だ。
カラスバさんは昨日と違い若草色の着物でリラックスした雰囲気を纏っている。似合っているのは昨日同様で私よりずっと違和感なくここに馴染んでいた。
私のじろじろ見ている視線を気取られたのか「似合うてる?」と問われて、頷いた。
「昨日は初対面やからごっつ張り切ったお着物着せてもろてんけど、今日はちゃんと普通やろ」
普通ってなんなんだろうか。落ち着いた色だけど作りは立派に見える。それをここまで堂々と着こなしている人はそういない。カラスバさんからお茶を受け取ると、
「親御さんなんて言うてた?」
と聞かれた。
私と実家のやり取りを察していたようだ。
「……」
「あかんかったみたいやな」
「私の説明が下手で」
「オレが行って説明しようか?」
「そうした方がいいかも。私じゃ手に負えない」
お世話になってる人だからと言おうものなら余計に拗れるのが私にも予想できた。カラスバさんのこと、どうやって説明したらいいのか……
「なんでそこまでしてくれるんですか?」
「せやって困るやろ。狐さん怒らせたら祟られるんやから」
狐様の祟り。
それもそうなんだけど。
カラスバさんはそんなこと無視しても良いわけで。
「あー、私が動けなくなったら異次元ミアレに飛び込める人が減ってしまうのか。そうか、大問題だ」
困るなーと納得しているとカラスバさんは空気を噛んで、言い淀んだ。
「ま、それもあるんやけど…………」
歯切れのいい彼には珍しい物言いに私の好奇心が刺激された。
「なんで?」
「…………言えない」
言えないってなんだ。そんな答えになってないもので引き下がれない。
聞き出すまで出て行かないつもりでじっと見詰めた。
う、とか、ぐ、とか唸る声が暫く続いてから、カラスバさんが私を見る。
「オレ小っちゃい時にここでオマエと会うてる」
どういう事?
「覚えてないよなあ…。
小さい頃初めてここに来た時、周りの大人誰もよう知らんで1人でいじけとった時にオマエと会ってる」
「あんまり説明になっていないような?」
あー、とかうーん、と呻いて髪の毛を掻き上げてカラスバさんは続けた。
「……オレは1人で身寄りがいなかったから。オレの側には誰もいないって話をしたら、オマエがオレのそばに来て、私がずっと一緒にいようか、どうしようか?って聞いてきて……オレより小さかったから覚えてないやろ」
知らない、と言うとカラスバさんは更に続けた。
「1人で生き延びて頑張っとったらオマエがミアレに来るし……
何の因果か知らんけど、嬉しかった。小っちゃい頃からずっとひとりでおるもんやと思ってたのにその度にオマエに邪魔されてる気がする。正義の味方みたいに絶対来てくれる、どこかでまた会える気もしてて、だから、その……頑張ってみるのも悪くないなって…………うん」
そう言ってからカラスバさんは俯いた。目の端は薄赤くて、顔を背けたけど決まり悪げなのは明らかで。
「……言うつもりなかってんけど黙ってるのはフェアじゃ無いよなあ…………」
「つまり?」
カラスバさんが驚いた顔で私を見た。
やっとこっち見た。
「オマエって鬼?」
「いや、狐、かな?いや、それも違うか」
「もう帰れ、オレ仕事あったわ、今日は帰れ」
ぐいぐいと背中を押されて部屋から押し出される。
「なんで。さっき終わったって」
「大人は色々あんねん」
障子が閉められて、どんな顔しているのか分からなくなった。
「カラスバさん、あの、私気になってるお店がいくつかあって……一緒に行きませんか」
障子越しに掛けた声に、手のひら分の隙間が開いて
「行く」
と返ってきた。
「後で?」
「後で。今はあかん」
もう一度ピシャリと閉められた障子の向こうにこれ以上彼の気配を感じることはできなかった。
戻るなりカラスバさんの歓迎を受ける。今一番顔を見たくて、一番会いたくない人だ。
カラスバさんは昨日と違い若草色の着物でリラックスした雰囲気を纏っている。似合っているのは昨日同様で私よりずっと違和感なくここに馴染んでいた。
私のじろじろ見ている視線を気取られたのか「似合うてる?」と問われて、頷いた。
「昨日は初対面やからごっつ張り切ったお着物着せてもろてんけど、今日はちゃんと普通やろ」
普通ってなんなんだろうか。落ち着いた色だけど作りは立派に見える。それをここまで堂々と着こなしている人はそういない。カラスバさんからお茶を受け取ると、
「親御さんなんて言うてた?」
と聞かれた。
私と実家のやり取りを察していたようだ。
「……」
「あかんかったみたいやな」
「私の説明が下手で」
「オレが行って説明しようか?」
「そうした方がいいかも。私じゃ手に負えない」
お世話になってる人だからと言おうものなら余計に拗れるのが私にも予想できた。カラスバさんのこと、どうやって説明したらいいのか……
「なんでそこまでしてくれるんですか?」
「せやって困るやろ。狐さん怒らせたら祟られるんやから」
狐様の祟り。
それもそうなんだけど。
カラスバさんはそんなこと無視しても良いわけで。
「あー、私が動けなくなったら異次元ミアレに飛び込める人が減ってしまうのか。そうか、大問題だ」
困るなーと納得しているとカラスバさんは空気を噛んで、言い淀んだ。
「ま、それもあるんやけど…………」
歯切れのいい彼には珍しい物言いに私の好奇心が刺激された。
「なんで?」
「…………言えない」
言えないってなんだ。そんな答えになってないもので引き下がれない。
聞き出すまで出て行かないつもりでじっと見詰めた。
う、とか、ぐ、とか唸る声が暫く続いてから、カラスバさんが私を見る。
「オレ小っちゃい時にここでオマエと会うてる」
どういう事?
「覚えてないよなあ…。
小さい頃初めてここに来た時、周りの大人誰もよう知らんで1人でいじけとった時にオマエと会ってる」
「あんまり説明になっていないような?」
あー、とかうーん、と呻いて髪の毛を掻き上げてカラスバさんは続けた。
「……オレは1人で身寄りがいなかったから。オレの側には誰もいないって話をしたら、オマエがオレのそばに来て、私がずっと一緒にいようか、どうしようか?って聞いてきて……オレより小さかったから覚えてないやろ」
知らない、と言うとカラスバさんは更に続けた。
「1人で生き延びて頑張っとったらオマエがミアレに来るし……
何の因果か知らんけど、嬉しかった。小っちゃい頃からずっとひとりでおるもんやと思ってたのにその度にオマエに邪魔されてる気がする。正義の味方みたいに絶対来てくれる、どこかでまた会える気もしてて、だから、その……頑張ってみるのも悪くないなって…………うん」
そう言ってからカラスバさんは俯いた。目の端は薄赤くて、顔を背けたけど決まり悪げなのは明らかで。
「……言うつもりなかってんけど黙ってるのはフェアじゃ無いよなあ…………」
「つまり?」
カラスバさんが驚いた顔で私を見た。
やっとこっち見た。
「オマエって鬼?」
「いや、狐、かな?いや、それも違うか」
「もう帰れ、オレ仕事あったわ、今日は帰れ」
ぐいぐいと背中を押されて部屋から押し出される。
「なんで。さっき終わったって」
「大人は色々あんねん」
障子が閉められて、どんな顔しているのか分からなくなった。
「カラスバさん、あの、私気になってるお店がいくつかあって……一緒に行きませんか」
障子越しに掛けた声に、手のひら分の隙間が開いて
「行く」
と返ってきた。
「後で?」
「後で。今はあかん」
もう一度ピシャリと閉められた障子の向こうにこれ以上彼の気配を感じることはできなかった。
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