「私お嫁に行くので」カラ主
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私が生まれた国には不思議な言い伝えがある。
狐に選ばれた子は祝福を受けてなんでも思い通りにできる力を手に入れるけど、お狐様を裏切ると不幸になる───
お狐様というのは特定の生き物を指すものではない。フォッコやマフォクシー、ロコンやキュウキンが混ざって不思議な力を持った存在とされる。姿は見えなくても、狐に選ばれた子にはそれを感じることができる。
その言い伝えを信じる地方に私は生まれた。
小さな頃に家から遠く離れたお家へ連れて行かれたのを覚えている。大きなお屋敷では大人があちこち行き来していて子どもには退屈だったけど、外の世界と切り離された静かで不思議な所だった。
「セイカちゃんはここの坊ちゃんと結婚するかもしれないから、大きくなったらまたここに来て狐様の前で儀式をしてね」と言われた。意味は分からなかったけどそこのお家にいる男の子のことはなんとなく分かる。女の子と別に3人の兄弟がいて、1人は私から見てほとんど大人に近くて随分お兄ちゃんだったから残った2人のどちらかなのだろう。周りの子に比べて意地悪をするでもなく物静かな子で、それは嫌ではなかった。
本当は、嫌だ、と思っていたけれど、逆らう力がなかった。
それから時々、狐の夢を見るようになった。なんて事のない普通の日だったり節目だったりタイミングは様々で、豪華な輿に乗った狐が体の中に入ってくる感覚が起きても体に残っていて存在を側に感じた。感覚だけはどんどん強くなるので、いよいよ言い伝えが迷信ではなく真実なのだと感じてきた。誰にも話せないまま私は大きくなり、その時は近付いていた。
長い旅路を列車と飛行機に揺られ、本宅を訪ねる前に実家へ戻った。ちょっとゆっくりすることができた。母親に「セイカの好きにしていいんだからね」と言われる。そう言われてもどうしていいか分からない。ミアレに行ったのだって最後のワガママだったのだ。そこで一生分の冒険をして、気の許せる友達ができた。これ以上望む事はないはずだ。もし我儘を言えるなら、ポケモンだけは手放したくない。ずっとポケモンを追いかけて走り回っていたい。これから会う人がどうか私の願いを分かってくれる人でありますように。
いつ来てもここは静かで不思議な場所で、心がざわつく。
一歩敷地へ足を踏み入れるとポケモンの気配どころか人に気配も消えてしまうみたいに静かで空気が澄んでいる。前に来た時と違うのは背が少し伸びたのと相棒がポーチで待っていることか。
屋敷に通されて、人の手が入った庭の緑を眺めていると声をかけられた。
「お休みのところ申し訳ありません。旦那さまがお待ちですので」
ついに、来たか。覚悟を決めようと決意した。向こうだって家の決まりで私と結婚させられるなんて望んでいないはずなのだから協力していいパートナーになろう。できるはず。ポケモンと心を通わせるようにいけば、の話だが。
決意してふすまを開けて顔を上げた。
「遠いところからはるばるいらっしゃい」
にこ、と微笑みかける男性を見て声を失った。着物に羽織りをかけて佇んでいた人が見知った人にそっくりだったからだ。
──カラスバさん?
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