【カラ主】「主人公さまは客観的に見て可愛らしいかと」
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こちらからの要求は初めのうち、すげなく断られることとなった。
まあ、慣れてる。
そういう仕事やさかいな。あちらの評判が良いばかりにうちが小銭目的のゆすりをしとると思われるのは仕方がない。
けどやらなあかん時があるやろ?今がその時でなくていつ気張るねん。
うちの「センセイ」に頑張ってもろて、ちょっと元気の有り余っとるヤツらにも頑張ってもらい交渉に漕ぎ着けることができた。
場所はサビ組ではなくこっちのセンセイに用意してもらう。テーブルを挟んでソファと観葉植物、書類棚が並んでいるだけの簡素なオフィスはこういう場にはピッタリだ。暴力を使ったと難癖を付けられないようジプソも辞してもらった。
話は徹底的に第三者主導で進めてもらう。こちらが暴力を使わず対等に話し合ったという証明が大事だ。
オレは来なくても良かったのだがセイカの笑顔を奪った男のツラを拝む為に朝からしっかり準備してきた(することは何も無いが気合いは溜めてきた)
気合十分になったオレを見送りながらジプソがとても神妙な顔をしていて「そない心配せんでも相手さんに手ぇ出したりせえへんよ」と伝えた。
……コンコン
約束の時間ぴったり、ソイツはやって来た。
オレの印象は、拍子抜け、やった。
……ああ、嫌いだ。笑顔や柔らかい態度を武器に相手を懐柔しようとする、人に好かれる為になんでもやりそうなヤツ。オレみたいなタイプだ。
話し合いの場には男の父も来ている。
こちらは長年地元の為に尽くしてきた名士らしく厳格そうな雰囲気を称え、背筋を伸ばして鋭い眼光で射抜いてくる。
「資金の疑惑についてはこちらが把握したのは以上になります。間違いないですね?」
話し合いを進めてくれている間オレは相手を観察した。
卒がなく目上の人間に好かれるタイプだ。
セイカがどうして。
こちらさんだって十分すぎるほどマトモな、真っ当なやり方で得た立場の持ち主が。セイカを一方的に好きになったり攻撃したいと思うんやろか。
「法的には問題がないと理解している。市長の認可も降りているし市民の理解も得たと思っている」
男は見た目通りのスキのない喋り方で型通りの返答を寄越した。鍔をぶつけ合い互いに譲る気はない姿勢だ。
「難癖では?そちらは何が狙いですか」
老紳士が横から口を挟んだ。静かながらも迫力を放つ低い声が部屋に響く。
「……では本題なのですが。こちらの女性への迷惑行為を止めて頂きたく」
カラスバは目を背けたくなった。
セイカが投稿した何気ない日常の風景に対して、辛辣な批判やしつこい要求が並んでいる。
強い罵倒も混ざっており老紳士が不快さを全面に出す。
「私はこの人を知らない。この女性が勝手に勘違いなさっているのでは?」
「知らないってことは無いと思いますが」
オレはたまらず口を挟んだ。
「私のふりをした誰かが嫌がらせか何かでやってるんでしょう。」
「……」
頭に血を昇らせないため黙ると「センセイ」がカラスバを制して続ける。
「あなたは彼女がよく行くところへ何度も足を運んでいますよね?」
「仕事であちこち行くものですから」
険しい目線を向けるカラスバを眼中にも入れず男は言ってのけた。
「言いがかりの域を出ない。議論が平行線なのでもう失礼しても?」
「本当にそれだけですか?
そのロトムスマホに何かありませんか?」
「あなた方には私のプライバシーに干渉する権利がありません」
「何も無いのなら見せてやりなさい」
そう言われた男に狼狽の色が走った。
「この方たちにこの場で何か細工などできないのだから」
「オレやのうてセンセイにお願いしましょうか」
…ほらな。当たりや。
陰のある表情になると男の印象は180度変わった。
彼の持っていた通信機器からセイカが写った写真が出てくるがどれもこちらを見ていない。
「こちらのお嬢さんは?」
父親の硬い表情のなかに怒りが滲んでいるが、無視して話を進めさせてもらう。
──彼女に初めて接触したのはいつですか?
いつから嫌がらせを?
自分の行いを正当化しましたか?
押し黙る男に対して老人が「どうしてこんな事を」と小さく呟いた。
そこからは簡単だった。
親に褒めてもらったことが無かったから。
母親が居なかったぶん厳しく育てられて自信を持つことがなかった。自慢できる息子でいたかったがそう思わせてくれなかった。
セイカに執着したのはバトルをする様子を見て。本人を見たら至って普通の子で、それなのに自分を馬鹿にして相手にしないから腹が立った。彼女に不満をぶつける権利があると思ったしそうすることで自分を意識すると考えた。
セイカに関する部分には聞くに堪えないものがあったがカラスバは努めて平静を保った。
「彼女は関係の無い人だろう」
痛みを堪えた表情で嘆く父親から後悔の念が見て取れた。
事が片付いて静かになったオフィスで、別室に続く扉を開いて中に入る。
一人で座っていたセイカがドアを開けたカラスバを見て立ち上がった。
いつものように元気いっぱいとは言えない様子にどう声をかけようかと思案する。
「大丈夫か?こっちは無事終わったところや」
「じゃあバトルでボコらなくても大丈夫ですか?」
そう返してくると予想していなくて、目玉が落ちるかと思った。
「物騒やなあ!」
「ポケモン大会は無しかあ」
本気で残念がっている声色のセイカにひとまずほっとする。ほんまに余計な世話やったかもしれんな……、と力が抜けた。
「慣れへんことで流石に疲れたやろ?外に出よか」
人の流れを避けて歩いているうちに小高い丘へ出て、ミアレを見下ろす形になった。下から吹き上げる柔らかい風がカラスバと隣に立っているセイカの髪の毛を揺らした。
セイカは、
「バトルしてないから変な感じだなあ。早く夜になればいいのに」
と呑気に言う。
「今日は帰りや。ゆっくりしたらええねん」
「することないし」
「無いからええねん」
そうもそうかあ、と納得する彼女に
「あんなことがあったから無理にとは言わんけど…気が向いたらまた写真とか載せてほしいわ。オレ結構楽しみに見とったからさ」
と伝えると
「うそ!」
と驚かれる。
「まあ見るだけやけど」
単に日々のことを呟いてるだけで無関係な男たちに目を付けられている様をこう近くで見ると、見ていると伝えることすら勇気が要った。
ああいう風に怖がらせたくないやん。
「カラスバさんもコメントとかくれたら嬉しいのに」
社交辞令とも取れる言葉にいちいち浮ついてしまう。
「キャラやないなあ」
目を逸らして眼鏡を触るのは照れた時の癖だ。気付かれていないことを祈った。
「…あの写真はもっぺん見たかったな」
「あの写真?」
「前に事務所で撮ったやつ…」
「ああ。もしかしてカラスバさんも彼女の振りしてくれる人が必要なんですか?」
もちろんそんな筈はなく、ただ彼女が傍にいることが嬉しくて気に入っただけだ。
「なんでやねん」
「ですよね?」
「オマエと一緒に映った写真が欲しいなと」
「そんなの、これからいくらでも撮りましょうよ!」
せやから、
特別な意味でな?
そう言う事ができず下を向いてしまう。
俯いているカラスバの隣にセイカが立ってロトムを構えた。
「今日の写真も撮ろう」
ほら、景色もいいし。そう言ってミアレの街を背に二人で肩を並べる。
カラスバはカメラではなく側に来たセイカの顔に視線をやる。
なんとも言えない顔でセイカのことを見ているオレとその隣で笑うセイカの写真が撮れた。それを見て思わず「可愛い。」と呟く。
あ、言うてもた。
今まで言うたこと無かったのに。
「いいかも」
ロトムは写真撮るのが上手だね、と満足気にロトムを褒めているところを見て、また「可愛い」という言葉が頭に浮かぶ。
あ、やばい。今まで我慢してた分が出てきとるのかも。どうしよ?
「カラスバさんも良く撮れてる、いいこれ」
深い意味は無いその言葉にも気恥しさを覚えて顔を背けた。長くなってきた日がやさしく頬に当たる。
「なかなかええなあ」
…可愛い。オレは、その言葉を抑えるのにこれから苦労をしそうな予感でいっぱいになった。
/end
まあ、慣れてる。
そういう仕事やさかいな。あちらの評判が良いばかりにうちが小銭目的のゆすりをしとると思われるのは仕方がない。
けどやらなあかん時があるやろ?今がその時でなくていつ気張るねん。
うちの「センセイ」に頑張ってもろて、ちょっと元気の有り余っとるヤツらにも頑張ってもらい交渉に漕ぎ着けることができた。
場所はサビ組ではなくこっちのセンセイに用意してもらう。テーブルを挟んでソファと観葉植物、書類棚が並んでいるだけの簡素なオフィスはこういう場にはピッタリだ。暴力を使ったと難癖を付けられないようジプソも辞してもらった。
話は徹底的に第三者主導で進めてもらう。こちらが暴力を使わず対等に話し合ったという証明が大事だ。
オレは来なくても良かったのだがセイカの笑顔を奪った男のツラを拝む為に朝からしっかり準備してきた(することは何も無いが気合いは溜めてきた)
気合十分になったオレを見送りながらジプソがとても神妙な顔をしていて「そない心配せんでも相手さんに手ぇ出したりせえへんよ」と伝えた。
……コンコン
約束の時間ぴったり、ソイツはやって来た。
オレの印象は、拍子抜け、やった。
……ああ、嫌いだ。笑顔や柔らかい態度を武器に相手を懐柔しようとする、人に好かれる為になんでもやりそうなヤツ。オレみたいなタイプだ。
話し合いの場には男の父も来ている。
こちらは長年地元の為に尽くしてきた名士らしく厳格そうな雰囲気を称え、背筋を伸ばして鋭い眼光で射抜いてくる。
「資金の疑惑についてはこちらが把握したのは以上になります。間違いないですね?」
話し合いを進めてくれている間オレは相手を観察した。
卒がなく目上の人間に好かれるタイプだ。
セイカがどうして。
こちらさんだって十分すぎるほどマトモな、真っ当なやり方で得た立場の持ち主が。セイカを一方的に好きになったり攻撃したいと思うんやろか。
「法的には問題がないと理解している。市長の認可も降りているし市民の理解も得たと思っている」
男は見た目通りのスキのない喋り方で型通りの返答を寄越した。鍔をぶつけ合い互いに譲る気はない姿勢だ。
「難癖では?そちらは何が狙いですか」
老紳士が横から口を挟んだ。静かながらも迫力を放つ低い声が部屋に響く。
「……では本題なのですが。こちらの女性への迷惑行為を止めて頂きたく」
カラスバは目を背けたくなった。
セイカが投稿した何気ない日常の風景に対して、辛辣な批判やしつこい要求が並んでいる。
強い罵倒も混ざっており老紳士が不快さを全面に出す。
「私はこの人を知らない。この女性が勝手に勘違いなさっているのでは?」
「知らないってことは無いと思いますが」
オレはたまらず口を挟んだ。
「私のふりをした誰かが嫌がらせか何かでやってるんでしょう。」
「……」
頭に血を昇らせないため黙ると「センセイ」がカラスバを制して続ける。
「あなたは彼女がよく行くところへ何度も足を運んでいますよね?」
「仕事であちこち行くものですから」
険しい目線を向けるカラスバを眼中にも入れず男は言ってのけた。
「言いがかりの域を出ない。議論が平行線なのでもう失礼しても?」
「本当にそれだけですか?
そのロトムスマホに何かありませんか?」
「あなた方には私のプライバシーに干渉する権利がありません」
「何も無いのなら見せてやりなさい」
そう言われた男に狼狽の色が走った。
「この方たちにこの場で何か細工などできないのだから」
「オレやのうてセンセイにお願いしましょうか」
…ほらな。当たりや。
陰のある表情になると男の印象は180度変わった。
彼の持っていた通信機器からセイカが写った写真が出てくるがどれもこちらを見ていない。
「こちらのお嬢さんは?」
父親の硬い表情のなかに怒りが滲んでいるが、無視して話を進めさせてもらう。
──彼女に初めて接触したのはいつですか?
いつから嫌がらせを?
自分の行いを正当化しましたか?
押し黙る男に対して老人が「どうしてこんな事を」と小さく呟いた。
そこからは簡単だった。
親に褒めてもらったことが無かったから。
母親が居なかったぶん厳しく育てられて自信を持つことがなかった。自慢できる息子でいたかったがそう思わせてくれなかった。
セイカに執着したのはバトルをする様子を見て。本人を見たら至って普通の子で、それなのに自分を馬鹿にして相手にしないから腹が立った。彼女に不満をぶつける権利があると思ったしそうすることで自分を意識すると考えた。
セイカに関する部分には聞くに堪えないものがあったがカラスバは努めて平静を保った。
「彼女は関係の無い人だろう」
痛みを堪えた表情で嘆く父親から後悔の念が見て取れた。
事が片付いて静かになったオフィスで、別室に続く扉を開いて中に入る。
一人で座っていたセイカがドアを開けたカラスバを見て立ち上がった。
いつものように元気いっぱいとは言えない様子にどう声をかけようかと思案する。
「大丈夫か?こっちは無事終わったところや」
「じゃあバトルでボコらなくても大丈夫ですか?」
そう返してくると予想していなくて、目玉が落ちるかと思った。
「物騒やなあ!」
「ポケモン大会は無しかあ」
本気で残念がっている声色のセイカにひとまずほっとする。ほんまに余計な世話やったかもしれんな……、と力が抜けた。
「慣れへんことで流石に疲れたやろ?外に出よか」
人の流れを避けて歩いているうちに小高い丘へ出て、ミアレを見下ろす形になった。下から吹き上げる柔らかい風がカラスバと隣に立っているセイカの髪の毛を揺らした。
セイカは、
「バトルしてないから変な感じだなあ。早く夜になればいいのに」
と呑気に言う。
「今日は帰りや。ゆっくりしたらええねん」
「することないし」
「無いからええねん」
そうもそうかあ、と納得する彼女に
「あんなことがあったから無理にとは言わんけど…気が向いたらまた写真とか載せてほしいわ。オレ結構楽しみに見とったからさ」
と伝えると
「うそ!」
と驚かれる。
「まあ見るだけやけど」
単に日々のことを呟いてるだけで無関係な男たちに目を付けられている様をこう近くで見ると、見ていると伝えることすら勇気が要った。
ああいう風に怖がらせたくないやん。
「カラスバさんもコメントとかくれたら嬉しいのに」
社交辞令とも取れる言葉にいちいち浮ついてしまう。
「キャラやないなあ」
目を逸らして眼鏡を触るのは照れた時の癖だ。気付かれていないことを祈った。
「…あの写真はもっぺん見たかったな」
「あの写真?」
「前に事務所で撮ったやつ…」
「ああ。もしかしてカラスバさんも彼女の振りしてくれる人が必要なんですか?」
もちろんそんな筈はなく、ただ彼女が傍にいることが嬉しくて気に入っただけだ。
「なんでやねん」
「ですよね?」
「オマエと一緒に映った写真が欲しいなと」
「そんなの、これからいくらでも撮りましょうよ!」
せやから、
特別な意味でな?
そう言う事ができず下を向いてしまう。
俯いているカラスバの隣にセイカが立ってロトムを構えた。
「今日の写真も撮ろう」
ほら、景色もいいし。そう言ってミアレの街を背に二人で肩を並べる。
カラスバはカメラではなく側に来たセイカの顔に視線をやる。
なんとも言えない顔でセイカのことを見ているオレとその隣で笑うセイカの写真が撮れた。それを見て思わず「可愛い。」と呟く。
あ、言うてもた。
今まで言うたこと無かったのに。
「いいかも」
ロトムは写真撮るのが上手だね、と満足気にロトムを褒めているところを見て、また「可愛い」という言葉が頭に浮かぶ。
あ、やばい。今まで我慢してた分が出てきとるのかも。どうしよ?
「カラスバさんも良く撮れてる、いいこれ」
深い意味は無いその言葉にも気恥しさを覚えて顔を背けた。長くなってきた日がやさしく頬に当たる。
「なかなかええなあ」
…可愛い。オレは、その言葉を抑えるのにこれから苦労をしそうな予感でいっぱいになった。
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