【カラ主】「主人公さまは客観的に見て可愛らしいかと」
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「スピルさまは客観的に見て可愛らしいかと」
昼下がりに腹心の部下と気の置けない会話を楽しみながら食事をしていた折のことだった。
食事の場でヤニついた話題を選びたくない思いから、会話をしていると出てくるのはしぜんとこの街の愉快な仲間達のことになり、エムゼット団のことに話が及んだ時にジプソが冒頭の言葉を口にしたのだ。
カラスバはさっき食べた昼ご飯が喉に仕えたような気になり思い切り噎せた。
いや、なんて?
「ですから、スピルさまは可愛らしい方かと存じますので」
堂々と言ってのけるジプソに自分の聞き間違いでも勘違いでもなかったことをカラスバは感じた。
「なのでいろいろな方がスピルさまにお声をかけられているようですよ」
ジプソはビジネス上の大事な情報を伝える時のようにしっかりとした喋り方をしている。
「アイツらの名前が売れて最近忙しくなってきたって話やんな?」
「それもありますが…スピルさまの見た目が人の興味を引いたようで」
そこだ。さっきからそこがカラスバには呑み込めていない。
「ボスはそういう事はあまり考えたことがないのですか」
スピルの見た目に関して深く考えたことがなかった。人知れずミアレの為に暴走したポケモンを鎮めて回っていたり、ロワイヤルを駆け上がってきた強さなど、そういうところがカラスバを惹きつける要素となっていたが、それらに押し出されて気にしたことがないと言われればそうなのだろう。
さっきから気の利かない男だと言われているようなのが癪なので言葉を捻り出す。
「強いて言うなら、バトルの時にこっちを見てくる目とか…」
その力強さを好ましいとは思っている。
「…多分、そういうのとはちゃうんやな」
カラスバは素直に負けを認めて白旗を上げた。
食後のお茶を持ってくるようウェイターに頼んで、ジプソは説明の姿勢に入った。
「一般的には顔立ちのことですね」
見た目と言うからにはそうだろう。
「目鼻が好ましいとされる位置にあるか、生命力を感じさせる美しさが肌や髪に現れているか」
「そういう物が揃うと人は可愛い、美しいと感じます。もちろん全員がそういう方を好むのではなく、自分に見合った相手を選ぶのも大事なのですが…」
「細かく言うと瞳の輝きであるとか睫毛や眉の生え方、それこそ色々なことが評価されますが」
「スピルさまはそういった点を多く持っているので好かれやすいでしょうね」
「ジプソってどっかで先生かなんかやってた?」
「恐縮です」
気付けの香りを漂わせるお茶を喉に流し込みながら思考を整理する。
「それってその、オマエが人より気が付くほうやから分かるとかそういうことでは無いんか?」
彼を評価しているからこそ浮かんだ疑問だった。自分だけ違う世界を見ているとは思いにくく、抗ってみる。
「そうですね。
ではカナリィさんの言っていたことから行きましょうか……
彼女は配信にスピルさまを呼びたがっていますが、画面に映える人と”ボコボコに殴り合って”いる絵面が数字になるとお考えのようで……」
あの遊びのことしか考えていないカナリィが?
カラスバが目を丸くしている間にジプソが言葉を続ける。
「シローさんはこう言ってますね。スピルさんは可愛らしい見た目で勘違いをされて危ない目に遭うことがあるかもしれないので、必要とあらば自分のところで武術を修めてほしいと」
「オレってシローよりも物が分かってないんかー?!」
カラスバは立場や場を忘れて大きな声を出してしまった。周りの人の視線が集まり、ここが外であることを思い出し咳払いし「…すまん」と呟いた。
「それからユカリさんが前にいちど…」
「…いやもうええわ」
何かと相容れないセレブの名前が出るやいなや言葉を切り、カラスバが大きめの溜息を吐き出す。遊び人代表のカナリィ、粗忽者のシローに負けただけで致命的なのだ。
「…要はオレだけが分かってないんやな」
「…そうなるでしょうか」
「オレってデリカシーないんか」
「わたくしはボスのそういうところは”世間に流されない”点だと思って好ましく感じていますが」
「それはおおきに。」
くすぐったい流れになりそうだったので手短に留める。
器から立ちのぼる湯気を見つめて思案する。
オレが『普通』みたいなんがよう分からんのはそやな…
生まれ育ちを考えたら仕方ないのかもせえへんけど。カナリィとかユカリも分かっとるようなことを…例えば、似たように普通ではない育ち方をしたグリは……何考えてるかわからんけど。接客という形で人々を喜ばせている以上、オレよりは幾らかマシかもしれん。
そうすると、オレはガイとかのレベルなんか。
妙にそれがしっくり来た。
人の目に頓着せずのらりくらりと生きているガキ、そういう奴と同じラインに自分はいる。
スピル/のことを好ましく思った男が一斉にスタートラインに立ったとして、もしかしてオレは不利なところに居るのでは?
そういった連中より早く知り合っていたこと、何度もバトルをしていること、共に街のために動いた日のことなどから、自分は有利なのだと思い込んでいた。
意外とそうではないのかもしれない。
カラスバは味わったことのない焦りを感じた。
今飲んでいるお茶よりも、もっと苦い気付けが必要そうだ。
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