【グリ主】仄か(カラ主あり)
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すっかり暗くなった通りに、ヌーヴォカフェに灯った明かりがぽつりと浮かび上がる。
店を閉めてからのこの時間がおれは結構嫌いではなかった。来てくれた人のことを思い出し、疲れと引き換えに微かな満足感を得る。そう思えるようになったきっかけはあの子とラボに閉じ込められたからで、最近はその夜のことを思い出し思案に沈むことが増えた。
あの子について、おれは誤解をしていた。
あんな小さな身体で眠れたことを喜ぶなんて。不安で眠れない夜があることを誰からも見えないように隠して一人で戦っていた。リザードンの腕に抱えられた小さな体。部下と一緒に降りてきたカラスバにも気付かず意識を落としていた。
今思えば、様子が──自分への苛立ちで拳に力が入る。
グリーズに言われた通りだ。
「グリがカラスバとあの子を見る目はなんか変なんだよ。アンタがあの子とカラスバを見る目はね、ご主人さまに懐いてるポケモンを見るような感じなんだよ。自分もそうだったらいいのになー、って目で二人を見てる。自分の気持ちには蓋をしてるからフィルター通したみたいに遠い世界のことだと思ってるだろ」
おれがどんな風にあの二人のことを見ているか、グリーズはおれよりずっとよく理解していた。おれは、彼女のことを物語や、空想世界に咲く花みたいに思ってたんだろう。
だからあの子が抱えてた孤独や胸に空いた穴に気付かずにいられた。おれとは違う生き物だと思っていたから。
こんな勝手な話があるだろうか。
自分を責めるのは自惚れかもしれないが、悔しさともどかしさは否定しきれなかった。
「おい。」
カウンターの奥で思案に沈むおれに声がかかった。お客さんは来ないはずの時間に、どうしたことだ。
「変わりないか?」
カラスバ──この人はまた、絶妙なタイミングで。
電気を落としたヌーヴォのテーブルに2人で向かい合って座る。
あの子の事だろうと分かっていた。彼とおれの接点はそれくらいだし、あの子に何かあるとこの人が動くのだと言うことも分かってきた。
一人の女の子の為にサビ組のボスが体を張るなんておれだって信じていなかったが、誰だって彼がラボに飛び込んできた時の真剣な様子を知ったら──
血相を変えて下階に降りてきて険しい表情を浮かべたカラスバを見たら。あの子の姿を認めて、ホッとして緊張を緩めた彼を見た瞬間、おれは確かに愛おしさみたいなものを感じた。人が人を思う方法をよく知らないおれにもキラキラと輝いて見えた。
同時に羨ましさみたいな小さな炎がチリチリと胸を焼いたのだけど、ふうと吹き消す。
注がれた茶に形式的に口を付けてからカラスバが単刀直入に切り出した。
「これは頼み事やお願いではなくて、オレの願望みたいなモンなんやけど」
「アイツを倒すつもりで戦ってくれ、というか倒してくれ」
「おれが?」
「そうや」
「強いヤツがおったらよう眠れるって言うとったやろ」
眉間に皺を寄せて頷いた。確かにそう言っていた。信じたくない話ではあるが。
「オマエが気に病まんでええ。ポケモン追っかけてビルとビルを飛び回って、一日中野生ポケモンと戯れるようなヤツや。オレにも変えられん」
カラスバが眼鏡をずらして眉間を抑える。
「ほんとはオレがやらなアカンのやけどな。手が回らん」
仕事の話でもするかのように事も無げに言うからたまらない。本来なら他でもない、オレの仕事、か──
「タダでとは言わんで」
「サビ組に恩を売ろうだなんて思ってませんよ」
「どうしてここまでするかのかって思っとるやろ」
「いや、そんな…」
「タワーの件と、あと分かってると思うけどあの黒いモヤモヤな。」
「皆ようさん頑張ってくれとるけどな、流石のアイツもいっぱいいっぱいやねん」
「忙しいしとった方が気が紛れると思ったんやけどな」
珍しく気弱な声を漏らしたカラスバに、今のを聞いてしまって良かったのか、という思いが頭を掠める。
「一個一個解決して行くしかないからな」
残った茶をぐいっと流し込み、
「強いヤツは多い方がいいやろ。街の人もそれで安心して暮らせるんや。
オレたちが強くならなアカン」
と力を込めて言われる。部下を励ますときの顔でそんなことを言われると。
「……オマエは何考えてるか分からんけど強いのは誰が見ても分かるしな」
なんか素直じゃないなあこの人。こんなんでちゃんとセイカさんに気持ちは伝わってるのか?
「なんやその顔…」
「元々こういう顔なんです」
おれがしらばっくれると、カラスバは
「言うとくけどアイツごっつ強なっとるで?文字通りの異次元クラスやで。」
と焚き付けた。
「おれもリザードンも戦闘要員として育てられたから大丈夫。忌まわしいと思ってた強さに使いようがあるなら嬉しく思う」
嘘偽りのない自己評価だ。
「……ふーん
ま何でもええわ。」
カラスバはこれで話は終わりとばかりに腰を浮かした。
灰に覆われた燃え殻が熱くなった気がして、おれは彼にも水を向ける。
「カラスバさんも強くなりたくありませんか?特訓相手ならおれがなりますよ。いつでもどうぞ。」
暗くて表情はわからなかったがカラスバの内側にある毒が滾っていくのがおれにもありありと伝わった。全身の毛穴から立ち上るような怒気に、ああこの人も良い顔をする、と、約束された激しいバトルに燃え殻が熱くなるのを感じた。
おれは彼の言葉を待ったが、カラスバは何度か肩を揺すり愉快そうに笑った。
そこからカラスバはすっと落ち着き、「あかんあかん、夜からご近所さんにご迷惑やん」とおれの闘志を透かした。
「オマエおもろい事言うなあ」
火のついた燃え殻の行き場を失ったおれをカラスバが宥める。
「それはアイツ用に取っとき。心配せんでも、アイツは全部受け止めるから。がんばってもイイとこに届かんときの焦れったさは癖になるで?」
──この人、バトルの話をしているんだよな?
揶揄うような、彼のどこか下卑た物言いに、おれも何故か期待を感じて額に汗が浮かぶ。
「気張って喜ばせたってな。ほいじゃあ、よろしゅう」
人を焚き付けておいて、何がそんなに愉快なのか分からなかったが。戦う役割を与えられたことに、指先がじんと痺れるようなむず痒さを覚えた。
店を閉めてからのこの時間がおれは結構嫌いではなかった。来てくれた人のことを思い出し、疲れと引き換えに微かな満足感を得る。そう思えるようになったきっかけはあの子とラボに閉じ込められたからで、最近はその夜のことを思い出し思案に沈むことが増えた。
あの子について、おれは誤解をしていた。
あんな小さな身体で眠れたことを喜ぶなんて。不安で眠れない夜があることを誰からも見えないように隠して一人で戦っていた。リザードンの腕に抱えられた小さな体。部下と一緒に降りてきたカラスバにも気付かず意識を落としていた。
今思えば、様子が──自分への苛立ちで拳に力が入る。
グリーズに言われた通りだ。
「グリがカラスバとあの子を見る目はなんか変なんだよ。アンタがあの子とカラスバを見る目はね、ご主人さまに懐いてるポケモンを見るような感じなんだよ。自分もそうだったらいいのになー、って目で二人を見てる。自分の気持ちには蓋をしてるからフィルター通したみたいに遠い世界のことだと思ってるだろ」
おれがどんな風にあの二人のことを見ているか、グリーズはおれよりずっとよく理解していた。おれは、彼女のことを物語や、空想世界に咲く花みたいに思ってたんだろう。
だからあの子が抱えてた孤独や胸に空いた穴に気付かずにいられた。おれとは違う生き物だと思っていたから。
こんな勝手な話があるだろうか。
自分を責めるのは自惚れかもしれないが、悔しさともどかしさは否定しきれなかった。
「おい。」
カウンターの奥で思案に沈むおれに声がかかった。お客さんは来ないはずの時間に、どうしたことだ。
「変わりないか?」
カラスバ──この人はまた、絶妙なタイミングで。
電気を落としたヌーヴォのテーブルに2人で向かい合って座る。
あの子の事だろうと分かっていた。彼とおれの接点はそれくらいだし、あの子に何かあるとこの人が動くのだと言うことも分かってきた。
一人の女の子の為にサビ組のボスが体を張るなんておれだって信じていなかったが、誰だって彼がラボに飛び込んできた時の真剣な様子を知ったら──
血相を変えて下階に降りてきて険しい表情を浮かべたカラスバを見たら。あの子の姿を認めて、ホッとして緊張を緩めた彼を見た瞬間、おれは確かに愛おしさみたいなものを感じた。人が人を思う方法をよく知らないおれにもキラキラと輝いて見えた。
同時に羨ましさみたいな小さな炎がチリチリと胸を焼いたのだけど、ふうと吹き消す。
注がれた茶に形式的に口を付けてからカラスバが単刀直入に切り出した。
「これは頼み事やお願いではなくて、オレの願望みたいなモンなんやけど」
「アイツを倒すつもりで戦ってくれ、というか倒してくれ」
「おれが?」
「そうや」
「強いヤツがおったらよう眠れるって言うとったやろ」
眉間に皺を寄せて頷いた。確かにそう言っていた。信じたくない話ではあるが。
「オマエが気に病まんでええ。ポケモン追っかけてビルとビルを飛び回って、一日中野生ポケモンと戯れるようなヤツや。オレにも変えられん」
カラスバが眼鏡をずらして眉間を抑える。
「ほんとはオレがやらなアカンのやけどな。手が回らん」
仕事の話でもするかのように事も無げに言うからたまらない。本来なら他でもない、オレの仕事、か──
「タダでとは言わんで」
「サビ組に恩を売ろうだなんて思ってませんよ」
「どうしてここまでするかのかって思っとるやろ」
「いや、そんな…」
「タワーの件と、あと分かってると思うけどあの黒いモヤモヤな。」
「皆ようさん頑張ってくれとるけどな、流石のアイツもいっぱいいっぱいやねん」
「忙しいしとった方が気が紛れると思ったんやけどな」
珍しく気弱な声を漏らしたカラスバに、今のを聞いてしまって良かったのか、という思いが頭を掠める。
「一個一個解決して行くしかないからな」
残った茶をぐいっと流し込み、
「強いヤツは多い方がいいやろ。街の人もそれで安心して暮らせるんや。
オレたちが強くならなアカン」
と力を込めて言われる。部下を励ますときの顔でそんなことを言われると。
「……オマエは何考えてるか分からんけど強いのは誰が見ても分かるしな」
なんか素直じゃないなあこの人。こんなんでちゃんとセイカさんに気持ちは伝わってるのか?
「なんやその顔…」
「元々こういう顔なんです」
おれがしらばっくれると、カラスバは
「言うとくけどアイツごっつ強なっとるで?文字通りの異次元クラスやで。」
と焚き付けた。
「おれもリザードンも戦闘要員として育てられたから大丈夫。忌まわしいと思ってた強さに使いようがあるなら嬉しく思う」
嘘偽りのない自己評価だ。
「……ふーん
ま何でもええわ。」
カラスバはこれで話は終わりとばかりに腰を浮かした。
灰に覆われた燃え殻が熱くなった気がして、おれは彼にも水を向ける。
「カラスバさんも強くなりたくありませんか?特訓相手ならおれがなりますよ。いつでもどうぞ。」
暗くて表情はわからなかったがカラスバの内側にある毒が滾っていくのがおれにもありありと伝わった。全身の毛穴から立ち上るような怒気に、ああこの人も良い顔をする、と、約束された激しいバトルに燃え殻が熱くなるのを感じた。
おれは彼の言葉を待ったが、カラスバは何度か肩を揺すり愉快そうに笑った。
そこからカラスバはすっと落ち着き、「あかんあかん、夜からご近所さんにご迷惑やん」とおれの闘志を透かした。
「オマエおもろい事言うなあ」
火のついた燃え殻の行き場を失ったおれをカラスバが宥める。
「それはアイツ用に取っとき。心配せんでも、アイツは全部受け止めるから。がんばってもイイとこに届かんときの焦れったさは癖になるで?」
──この人、バトルの話をしているんだよな?
揶揄うような、彼のどこか下卑た物言いに、おれも何故か期待を感じて額に汗が浮かぶ。
「気張って喜ばせたってな。ほいじゃあ、よろしゅう」
人を焚き付けておいて、何がそんなに愉快なのか分からなかったが。戦う役割を与えられたことに、指先がじんと痺れるようなむず痒さを覚えた。
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