【グリ主】仄か(カラ主あり)
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地下室に閉じ込められ二人で過ごした件があってもおれに変わったところは無かった。少なくとも見た目上は。いつも通りに、ここへ来てコーヒーを提供する。
あの子のほうがどうかは知らないが、嫌がらせを受けてトラブルになった日のことなど思い返したくないだろうから、忘れ去るのが彼女にとっていいのだろうと思った。
「こんにちはグリさん」
カウンターに立つおれに声がかかった。あの子が背伸びをしてがんばっておれと目を合わせようとしている。
いつもと変わらない、マスターとしての微笑みを心掛けるが、少しだけ、他のお客さん達と挨拶する時に比べて口角が上がった。どうかおれが浮き足立っていることがバレていないようにと願った。
「こんにちはセイカさん」
「この間はありがとうございました」
「いえ、なかなかいい体験でした。おれも迂闊でしたし」
いい体験、と言ったのはこの子を励ます為のはずだが面映ゆく感じるほどに言葉に嘘偽りはなかった。
「グリさんは立派でしたよ」
お世辞と分かっていても嬉しくなる。そこでおれは『彼女の信頼を勝ち得たい』と思っている自分に気が付いた。今まで人に期待したことなどなかったのに、彼女に頼られて、彼女が動けないとき、代わりに戦うことができると示したかった。例えば、カラスバのように?
……あの時感じた不思議な感覚を、どういう言葉で表せばいいんだろう。血相を変えて飛び込んできたカラスバの姿を見て、羨ましくなった。おれは生まれ変わりでもしない限りこういう素直な男にはなれないと悟ったから。
けどあそこへ来たのが彼で良かったと思った。あの子に危害が及ばないと分かり安心すると、カラスバが彼女の為にやっている行動の何分の一かでも果たせたような気がして、満足感がボールを握る拳に残った。
「グリさん、わたしすぐ眠っちゃったでしょ。
もし私がグリさんの側でモンスターボールを構えて守っていたらあんな風に安心して眠れそうですか?」
カウンター越しに問いかけられる。彼女の瞳は不思議といつも星を宿したようにうるうると光っていて、その光が一層強くなるとき、ご機嫌なのだということが見た人に伝わる。そういうところが彼女といると心が解けていく理由の1つなのだろう。
「同じくらい強い人がいてくれたら、と思うことはありますか?」
「どうでしょう。考えたことが無かったですね」
彼女はいったい何を訊こうとして──……
「あの時、グリさんがわたしにしてくれたことをはっきりさせておきたいと思って」
おれがしたのは、ただいつものように飲み物を振る舞って休んでもらったことくらいだ。
「グリさんは、寝付きはよいほうですか?」
「…はい?」
「はい、寝付き……」
「……や、そんなに良いほうではないかもしれないですが」
「そうですか」
「あまり参考にならなかったらすみません」
つまらない返答しかできず申し訳なく思った。
「わたしはすぐ寝ちゃったのにグリさんはずっと起きていてくれたでしょ」
「…ああ。おれもリザードンも元気だったので平気ですよ」
「だったらいいんですが、実はあんまり外でよく眠ったことなくて…」
「疲れてたのは分かりましたよ」
作業の手は止めず、微笑みを絶やさないように彼女の言葉を待つ。疲れていたのに危険を承知で地下へ降りて来たことに感謝はしても責めようとは今はもう思わない。
「疲れていたけど、怖くなかったと言ったら嘘になるので」
おれの顔が少し曇る。これは嫌悪感ではない。心配と言うのだろう。
「自分でも凄く驚いたんですけど」
珍しく言いたいことが上手く言葉にできないのか、指を顔の周りでぐるぐる動かしながら言葉を紡いでいる。
「グリさんてここの誰よりも強いじゃないですか。だからあの日はすごく安心しちゃって」
彼女がニコリと笑うと瞳の星が見えなくなる。その代わり、ずっと暖かい日の光に包まれたようになる。
「あんな気分、AZさんに会えなくなってからずっとなかったから嬉しくて。幸せだなと思いながら眠りました」
おれの手が止まって、閉じられた目は変わらないが驚いて息が詰まる。
「よかった、1番つっかえてたことが言えて。なんて言ったらいいか分かんなかったんですよね」
あの、と声を掛けようとカウンターに手を掛けたその時は彼女は踵を地面につけていて、
「ありがとうございました、もうあんな事はしないんで。わたしが助ける側のはずだったんで」
じゃあ、と言って翻って背中を遠くに見送った。
取り残されたおれのところになんか変だけどとグリーズがあの子の後ろ姿を指差しながらやって来る。
「グリーズ、おれってアホだと思うか」
「……へ?アホな時も多分あると思うし賢い時もちゃんとあるよ」
「だよな?おれもずっとそう思ってたんだが、自分で思っていたよりもバカだったかもしれない」
「どうしようグリも変だ」
人が往来する午後のカフェで周りの声が遠くに感じた。
あの子のほうがどうかは知らないが、嫌がらせを受けてトラブルになった日のことなど思い返したくないだろうから、忘れ去るのが彼女にとっていいのだろうと思った。
「こんにちはグリさん」
カウンターに立つおれに声がかかった。あの子が背伸びをしてがんばっておれと目を合わせようとしている。
いつもと変わらない、マスターとしての微笑みを心掛けるが、少しだけ、他のお客さん達と挨拶する時に比べて口角が上がった。どうかおれが浮き足立っていることがバレていないようにと願った。
「こんにちはセイカさん」
「この間はありがとうございました」
「いえ、なかなかいい体験でした。おれも迂闊でしたし」
いい体験、と言ったのはこの子を励ます為のはずだが面映ゆく感じるほどに言葉に嘘偽りはなかった。
「グリさんは立派でしたよ」
お世辞と分かっていても嬉しくなる。そこでおれは『彼女の信頼を勝ち得たい』と思っている自分に気が付いた。今まで人に期待したことなどなかったのに、彼女に頼られて、彼女が動けないとき、代わりに戦うことができると示したかった。例えば、カラスバのように?
……あの時感じた不思議な感覚を、どういう言葉で表せばいいんだろう。血相を変えて飛び込んできたカラスバの姿を見て、羨ましくなった。おれは生まれ変わりでもしない限りこういう素直な男にはなれないと悟ったから。
けどあそこへ来たのが彼で良かったと思った。あの子に危害が及ばないと分かり安心すると、カラスバが彼女の為にやっている行動の何分の一かでも果たせたような気がして、満足感がボールを握る拳に残った。
「グリさん、わたしすぐ眠っちゃったでしょ。
もし私がグリさんの側でモンスターボールを構えて守っていたらあんな風に安心して眠れそうですか?」
カウンター越しに問いかけられる。彼女の瞳は不思議といつも星を宿したようにうるうると光っていて、その光が一層強くなるとき、ご機嫌なのだということが見た人に伝わる。そういうところが彼女といると心が解けていく理由の1つなのだろう。
「同じくらい強い人がいてくれたら、と思うことはありますか?」
「どうでしょう。考えたことが無かったですね」
彼女はいったい何を訊こうとして──……
「あの時、グリさんがわたしにしてくれたことをはっきりさせておきたいと思って」
おれがしたのは、ただいつものように飲み物を振る舞って休んでもらったことくらいだ。
「グリさんは、寝付きはよいほうですか?」
「…はい?」
「はい、寝付き……」
「……や、そんなに良いほうではないかもしれないですが」
「そうですか」
「あまり参考にならなかったらすみません」
つまらない返答しかできず申し訳なく思った。
「わたしはすぐ寝ちゃったのにグリさんはずっと起きていてくれたでしょ」
「…ああ。おれもリザードンも元気だったので平気ですよ」
「だったらいいんですが、実はあんまり外でよく眠ったことなくて…」
「疲れてたのは分かりましたよ」
作業の手は止めず、微笑みを絶やさないように彼女の言葉を待つ。疲れていたのに危険を承知で地下へ降りて来たことに感謝はしても責めようとは今はもう思わない。
「疲れていたけど、怖くなかったと言ったら嘘になるので」
おれの顔が少し曇る。これは嫌悪感ではない。心配と言うのだろう。
「自分でも凄く驚いたんですけど」
珍しく言いたいことが上手く言葉にできないのか、指を顔の周りでぐるぐる動かしながら言葉を紡いでいる。
「グリさんてここの誰よりも強いじゃないですか。だからあの日はすごく安心しちゃって」
彼女がニコリと笑うと瞳の星が見えなくなる。その代わり、ずっと暖かい日の光に包まれたようになる。
「あんな気分、AZさんに会えなくなってからずっとなかったから嬉しくて。幸せだなと思いながら眠りました」
おれの手が止まって、閉じられた目は変わらないが驚いて息が詰まる。
「よかった、1番つっかえてたことが言えて。なんて言ったらいいか分かんなかったんですよね」
あの、と声を掛けようとカウンターに手を掛けたその時は彼女は踵を地面につけていて、
「ありがとうございました、もうあんな事はしないんで。わたしが助ける側のはずだったんで」
じゃあ、と言って翻って背中を遠くに見送った。
取り残されたおれのところになんか変だけどとグリーズがあの子の後ろ姿を指差しながらやって来る。
「グリーズ、おれってアホだと思うか」
「……へ?アホな時も多分あると思うし賢い時もちゃんとあるよ」
「だよな?おれもずっとそう思ってたんだが、自分で思っていたよりもバカだったかもしれない」
「どうしようグリも変だ」
人が往来する午後のカフェで周りの声が遠くに感じた。