｢た、ただいま…｣

用心しながらドアを開ける。
結局今日1日、あの青年の事を考えるだけで過ごしてしまった。
しかも玄関には見覚えのない靴。
ブーツみたいな形状をしており、そのデザインや色もあの青年の鎧と合わせている様に感じる。
間違いない、絶対今朝僕が叫んだ事聞いてない。
溜息を吐きながら靴を脱いで上がり、リビングに入った時、僕は更に溜息を零した。

何故かって？
あの青年がソファーに座って上の空でいたからだ。
幸いこっちには気付いてないようだが、やはり僕の部屋から出てしかも心做しかソファーで寛いでいる様に見える。

暫くその様子を見つめていると、漸くこちらの存在に気付いたのか、僕に視線を向けて、

｢おかえり｣

と、まるで前から住んでいる様に言った。