愛を乞うひと

あれから3週間。万里が私に触らなくなった。
ちょっと違うな、抱きしめてくれるし、キスもしてくれる。でもその先を求めてこなくなった。
なかなか会えなくて1ヶ月以上セックスしないなんてことは、以前にもあった。でも明らかに家で2人きりで、生理でもなくて、いつもだったら即刻押し倒されてるような状況が何度もあったのに、しない。スキンシップもキスも、延長線上にセックスがあるものだ。だからそれらも何となく全部あっさりしているというか、淡白というか。多分意識的に避けているんだ。

久我城君に襲われてから、確かに少し自分より大きな男の人に身構えるようになってしまった。万里に対しても、ちょっとそういうそぶりがあったのかも知れない。彼はそれにちゃんと気づいていて、私を気遣ってる。なんて優しいんだろう。もう本当に愛してる。

でも、こっちだって思春期の女子だ。はっきり言って物足りない。いつまでも腫れ物に触るように扱われるのも、何だか嫌だ。

だから私が万里を押し倒すことにした。

いつものように一緒にサテライト授業を受けて、問題集の答え合わせもした。今日のノルマは達成してる。清瀬たちが帰ってくるまであと2時間もある。食材も揃ってる。何も問題ない。
勉強道具を片付けて、時間あるね、映画でも観る?なんて呑気に言う万里に正面から抱きついて、唇に噛み付いてやった。もちろんすぐに応えてくれて、でも何だか薄ぼんやりした、消極的なキスだ。無性に腹が立った。離れられないように頭を抱えて、うんと濃厚に口付ける。唇を離したら、耳を食んで(万里は耳が弱い)、首筋に唇を這わせた。もちろんカーディガンとその下のカットソーの裾をめくって中にも手を入れて、さらさらと肌を撫でる。お腹にキスすると、少し感じたようにぴくりと身体が動いた。
「ちょ、ちょっと待って夜子。待って待って」
「やだ、待たない」
チノパンのジッパーを下げて、中に手を入れる。手のひらで擦るように撫でると、すぐに反応して硬くなった。私は彼に跨って、自分のセーターを脱ぎ捨てる。
「ちょ…っと!まじで待てって!」
両肩をつかまえられる。万里は私を真剣な目で見つめて、ため息をついた。それから自分のカーディガンを脱ぐと、下着姿の私の肩を包むようにかける。
「…どうして?」
「だって夜子、本当に大丈夫?まだ怖いんじゃないの?なんかヤケになってない?」
「なってないよ」
「それならいいけど…本当に俺、怖くない? 正直えっちの時って、ちょっと理性飛んでるし、乱暴にしてないか気になって…」
そうか、彼もまた、少し傷ついていたんだ。私はゆるゆると首を振った。
「万里はいつも優しいよ。初めての時だって、何度も『痛くないか』『怖くないか』って聞いてくれて、その…たくさん待ってくれたし…」
初めての時、なかなか全部挿入できなくて、すごく時間がかかったのだった。彼は絶対に無理強いしなかった。たくさん時間をかけて、優しく優しくしてくれた。今でも宝物みたいな時間だったと思ってる。
「俺それぜんっぜん覚えてないんだよー!」
「えっ何それ」
「夜子抱けるのが嬉しすぎてすんごい興奮しててさぁ。記憶が曖昧なんだよ…気づいたら2回目終わってて、夜子ぐったりしてて…」
「まじか」
「すいません…」
確かに立て続けに求められて休む暇を与えてもらえなかった記憶はある。だからか。
「でも本当に、嫌なことなんてひとつもなかったよ。あの時は慣れなかったけど、今はすごくき…気持ちいいし…」
「本当?」
「本当。だからもうお預け状態なの辛いの!このままずっと、抱かないつもりなの?」
はー、と万里は頭を抱えた。あー、とうめき声を漏らす。顔を覗き込もうとすると、がば、と起き上がった。私の肩にかかっていたカーディガンを払い落として、きつく抱きしめた。
「じゃあお言葉に甘えて遠慮なく。実はめっ…ちゃくちゃ溜まってる!」
言うなり激しくキスされて、床に押し倒される。そのまま彼は上半身に残っていたカットソーを脱ぎ捨てた。
「わ、待って。ベッド…」
「あとで。ゴム持ってるから」
肌が触れ合ったら、私も理性が飛んでしまった。あとはまあ、ご想像の通りの展開。
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