猫も食わない
なあ。今日なあ、久々に孝二帰ってくるねんて。そらもう、最後に会うたの、いつやったかなあ。そら嬉しいよ。
けどな。そんときなあ、ツレが一緒やってん。あの孝二が人連れてきよるなんて珍しいこともあるもんやなあと思っとったら、それがまたとんでもないやつでなあ。
孝二と一緒にぼーだー、とかいう前線で働いとるくせに、孝二よりもなまっちょろい体して、生気もなんもない目えした男やったんや。しかもなあ、そいつ、わりかし猫の扱い上手かってん。他の猫の匂いもせえへんし、飼っとるわけでもなさそうやのに。猫、いうかおれの扱いやな。初めて会うたくせに、まあ孝二から色々聞いとったんやろけど、おれの欲しいもんやら触ってもええとこやら、全部的確に当ててきてん。せやからなんや怖なって、それ以上近寄らんかってん。
せや、そのあとがまた大変やったんやわ。そんなんしとったらなあ、おれが離れとったんを良いことに孝二がそいつに覆い被さってなあ。「見てへん見てへん、大丈夫ですよ」なんて言うて。思わず、アホ、ちゃあんと見とるで、言うてまいそうになったわ。ま、んな野暮なことようせえへんよ。当たり前やないか。気いきかしてちゃんと外出てってやったわ。飼い猫いうんも、なかなか楽やないんやで。
せやで、あんなちいこかった孝二ももう立派な大人やねんで。前も、孝二が二十歳になったとかで、せーじんしき、いうんで帰ってきとってな。おん、人間にとっては二十歳いうんがなんやめでたいんやろ。おれらはそないな年まで生きられへんし、生きとっても化け猫扱いされんのがオチやろ。まあなんや、別にそんなんもたまにはええんちゃう。おれは猫のほうが気楽でええけどな。
そんときの孝二はなあ、スーツびしっと着て、いかにも、いう格好しとったなあ。ああ、せやせや。ちょうどあんな格好……って、もう帰ってきたんか。うわ、またあいつも一緒や。なんやねん、ふたりしてスーツ着ておめかししよって。よう見るとなんや様子もおかしいなあ。いつもの孝二ちゃう、動きも表情も固ったいな。挨拶?なんのや。……はあ?んなアホな話あるわけないやんか。孝二はずっとこの家の子やねん。知らんわ、どうせまたあいつが孝二誑かして、何かの帰りにただついてきただけに決まっとるわ。
ほんならそろそろ戻るな。勝手に外出てんのバレるとまたうるさいんや。それに、はよ中の様子見に行かな。ほな、またな。
けどな。そんときなあ、ツレが一緒やってん。あの孝二が人連れてきよるなんて珍しいこともあるもんやなあと思っとったら、それがまたとんでもないやつでなあ。
孝二と一緒にぼーだー、とかいう前線で働いとるくせに、孝二よりもなまっちょろい体して、生気もなんもない目えした男やったんや。しかもなあ、そいつ、わりかし猫の扱い上手かってん。他の猫の匂いもせえへんし、飼っとるわけでもなさそうやのに。猫、いうかおれの扱いやな。初めて会うたくせに、まあ孝二から色々聞いとったんやろけど、おれの欲しいもんやら触ってもええとこやら、全部的確に当ててきてん。せやからなんや怖なって、それ以上近寄らんかってん。
せや、そのあとがまた大変やったんやわ。そんなんしとったらなあ、おれが離れとったんを良いことに孝二がそいつに覆い被さってなあ。「見てへん見てへん、大丈夫ですよ」なんて言うて。思わず、アホ、ちゃあんと見とるで、言うてまいそうになったわ。ま、んな野暮なことようせえへんよ。当たり前やないか。気いきかしてちゃんと外出てってやったわ。飼い猫いうんも、なかなか楽やないんやで。
せやで、あんなちいこかった孝二ももう立派な大人やねんで。前も、孝二が二十歳になったとかで、せーじんしき、いうんで帰ってきとってな。おん、人間にとっては二十歳いうんがなんやめでたいんやろ。おれらはそないな年まで生きられへんし、生きとっても化け猫扱いされんのがオチやろ。まあなんや、別にそんなんもたまにはええんちゃう。おれは猫のほうが気楽でええけどな。
そんときの孝二はなあ、スーツびしっと着て、いかにも、いう格好しとったなあ。ああ、せやせや。ちょうどあんな格好……って、もう帰ってきたんか。うわ、またあいつも一緒や。なんやねん、ふたりしてスーツ着ておめかししよって。よう見るとなんや様子もおかしいなあ。いつもの孝二ちゃう、動きも表情も固ったいな。挨拶?なんのや。……はあ?んなアホな話あるわけないやんか。孝二はずっとこの家の子やねん。知らんわ、どうせまたあいつが孝二誑かして、何かの帰りにただついてきただけに決まっとるわ。
ほんならそろそろ戻るな。勝手に外出てんのバレるとまたうるさいんや。それに、はよ中の様子見に行かな。ほな、またな。
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