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夜が明けた。
愛しい時間は、あっという間に過ぎ去るのはどうしてだろう。
明けなければいいのに。
永遠に……夜でいいのに。
「ん………」
横で眠っていた君が身じろいだ。
その頬に降りかかった髪を横に流してやると、その瞳がゆっくりと開いた。
「ちちり……?」
言い終わって、あっ、と口を閉じる奏多に、俺は自然と笑っていた。
「構わない。“井宿”と、呼んでくれ」
「え……?」
「すまなかった。君にばかり、辛い思いをさせた」
「何を……」
「本の中に……戻るのだ」
「っ………」
奏多が、俺の肩口に額を押し当てた。
その小さく華奢な肩が小刻みに震えている。
ああ、泣かせてしまった。
俺はどこまでも、酷い男だ。
「奏多……必ず、戻ってみせるのだ」
「……ち、ちり………」
「俺に何が出来るかわからないけれど、必ず成し遂げて君の元へ戻る」
「っ……うん、うん!待ってるっ」
顔を上げて見てくる。その顔は涙で濡れてしまっていて、頬を何度も拭った。
「奏多……愛してる」
「ええ。私もよ」
「戻ってきた時は……その時はまた……」
奏多はコクリと頷いた。
するりと肩から髪が落ちてくると、俺の胸に乗った。
「ええ。また、“准”と呼ぶから……たくさん呼ぶわ。だからまた……こうして抱きしめてね」
朝日を浴びて、キラキラと輝く瞳がにっこり微笑んだ。
「まったく……君は相変わらずなのだ」
ああ、頑張れそうだ。いや、頑張らないでどうする。
奏多が懸命に送り出そうとしてくれているんだ。
俺もしっかりしないでどうする。
身支度を済ませた。
奏多は俺に、新しい服を一式用意していた。
「本当は……法衣とかの方がいいのかもしれないけれど……」
「いや、俺自身はあちらの服は着慣れてないから。奏多が用意してくれた服がいい」
シャツにシンプルなパンツスタイル。
ラフな格好だから、着慣れているのはこちらだ。
「皆に……よろしくね?」
「ああ。くれぐれも君も気をつけて。俺が消えたらあの本をすぐに閉じるのだ。いいね?」
「………ええ。わかったわ」
確かあの本はそこで終わっていたはずだ。
きっとあの物語は俺が戻ることで終わるのだろう。
終わり、か……。
戻る、と約束したのにこれだ。
手が、勝手に君に伸びてしまう。
離れたくないと、まだ足掻いてしまう。
「っ………准!!」
奏多が俺に飛び込んできた。
しっかりと君のぬくもりを忘れないように、そして、君にも忘れられないようにキスをした。
「ふ……ぅ……」
涙でまた、頬が濡れてしまった。それでも深く唇を重ねた。
長く長く、息も出来ないほど君にキスをした。
互いの吐息が熱く、甘くなる。
忘れないで。
俺も、忘れない。
「奏多……永遠に……君を愛している」
俺が目にした愛する人の顔は……涙で潤んだ笑顔だった。
眩い光を感じ目を閉じる。
再び開けたその目に飛び込んできた世界は……懐かしさを全身に感じた。
Fin.
愛しい時間は、あっという間に過ぎ去るのはどうしてだろう。
明けなければいいのに。
永遠に……夜でいいのに。
「ん………」
横で眠っていた君が身じろいだ。
その頬に降りかかった髪を横に流してやると、その瞳がゆっくりと開いた。
「ちちり……?」
言い終わって、あっ、と口を閉じる奏多に、俺は自然と笑っていた。
「構わない。“井宿”と、呼んでくれ」
「え……?」
「すまなかった。君にばかり、辛い思いをさせた」
「何を……」
「本の中に……戻るのだ」
「っ………」
奏多が、俺の肩口に額を押し当てた。
その小さく華奢な肩が小刻みに震えている。
ああ、泣かせてしまった。
俺はどこまでも、酷い男だ。
「奏多……必ず、戻ってみせるのだ」
「……ち、ちり………」
「俺に何が出来るかわからないけれど、必ず成し遂げて君の元へ戻る」
「っ……うん、うん!待ってるっ」
顔を上げて見てくる。その顔は涙で濡れてしまっていて、頬を何度も拭った。
「奏多……愛してる」
「ええ。私もよ」
「戻ってきた時は……その時はまた……」
奏多はコクリと頷いた。
するりと肩から髪が落ちてくると、俺の胸に乗った。
「ええ。また、“准”と呼ぶから……たくさん呼ぶわ。だからまた……こうして抱きしめてね」
朝日を浴びて、キラキラと輝く瞳がにっこり微笑んだ。
「まったく……君は相変わらずなのだ」
ああ、頑張れそうだ。いや、頑張らないでどうする。
奏多が懸命に送り出そうとしてくれているんだ。
俺もしっかりしないでどうする。
身支度を済ませた。
奏多は俺に、新しい服を一式用意していた。
「本当は……法衣とかの方がいいのかもしれないけれど……」
「いや、俺自身はあちらの服は着慣れてないから。奏多が用意してくれた服がいい」
シャツにシンプルなパンツスタイル。
ラフな格好だから、着慣れているのはこちらだ。
「皆に……よろしくね?」
「ああ。くれぐれも君も気をつけて。俺が消えたらあの本をすぐに閉じるのだ。いいね?」
「………ええ。わかったわ」
確かあの本はそこで終わっていたはずだ。
きっとあの物語は俺が戻ることで終わるのだろう。
終わり、か……。
戻る、と約束したのにこれだ。
手が、勝手に君に伸びてしまう。
離れたくないと、まだ足掻いてしまう。
「っ………准!!」
奏多が俺に飛び込んできた。
しっかりと君のぬくもりを忘れないように、そして、君にも忘れられないようにキスをした。
「ふ……ぅ……」
涙でまた、頬が濡れてしまった。それでも深く唇を重ねた。
長く長く、息も出来ないほど君にキスをした。
互いの吐息が熱く、甘くなる。
忘れないで。
俺も、忘れない。
「奏多……永遠に……君を愛している」
俺が目にした愛する人の顔は……涙で潤んだ笑顔だった。
眩い光を感じ目を閉じる。
再び開けたその目に飛び込んできた世界は……懐かしさを全身に感じた。
Fin.
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