ある日の出来事【旺牙の気苦労】
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「バカだな、あんた」
「バカって言うな!」
「最近の行動はそれがあったからか……目に余るものがある」
1人納得した旺牙は、ズイ、と近づいてきた。
そばに立つと、それだけでこいつはこんなにも背が高いのかと思い知らされる。
「わからせてやる」
そう言われると、私は旺牙にその場に押し倒された。
「はあ………っ、く………」
……なんだ、これ………
「まだ出来るだろ」
こいつ、平気な顔しやがって……!
「も、ムリ……っ………キツ、」
「まだだ……、」
「そういう旺牙も、息……上がってるけど……?」
「あんたに合わせてるからだ。遅すぎる」
「ふ、ざけんな……、余裕だっつの」
「だったら俺の速さについてくるんだな」
「く、そぉ……!負けるかあ!!」
「………98!99!ひゃ……くぅっ!!!」
「ほらっ!出来たじゃん!!」
「俺はこれをあと1回してから寝るけどな。毎日」
「毎日!?腹筋200回!?」
「寝る前はな」
………そう。
私が押し倒されたのは、こいつが、「上体起こしやってみろ。男なら100は余裕だ」なんて言ってきたから、腹筋をするためだった。
調子に乗って飛ばしすぎた。
もう私の上体起こしは、もはや上体起こしではなかった。
なのに横でやっていた旺牙は息は上がるものの、それは規則正しい息遣いで、テンポはもちろんのこと顔色1つ変わっていない。
完敗だ。
「あんた……こんなこと毎日して楽しいわけ?」
「楽しいかどうかは知らん。ただ……」
そこまで言うと、旺牙はまた、じ……と私を見てくる。
熱くなった体の火照りを逃がすために、パタパタと胸元の服を動かしながら私は首を傾げた。
「なに?」
「男は無性に体を動かしたくなる時がある。ただそれだけだ」
「………ふぅん」
なんか根本的に違うんだろうな。
体を動かすのは嫌いじゃないけれど、確かにジムで見ていた人たちのように、自分を限界ギリギリまで追い込んでまで鍛えようとは思わない。
男と女の差、か。
「あんたがこの山に来てからというもの、身体を鍛えてくれと言ってくる奴が増えた」
「へー!いいことじゃん!私が刺激になったか?」
「なったんだろうな。あんたでも」
「私に負けるとでも思ったんだな!」
「そんなことで刺激されるか、バカ」
「だから、バカって言うな!!」
「男をバカにするからだ、バカ」
くそー!!
ほんと腹立つヤツ!
「旺牙……あんま私を怒らせるなよ……」
「…………!」
「もう2度とみたらし団子……」
「すまん。また作ってくれ」
まだ最後まで言ってないのに。
「旺牙、あんたかわいくない。でもほんと面白い」
「お前に言われたくないな」
素直なとこもあるのに、またひねくれた言葉もいう。
でも、こいつも信頼できる。
翼宿が認めたやつはきっとすごいんだ。
「旺牙、明日もよろしく」
「……今日みたいなことはするな。疲れるから」
「え?何?何が?」
「……お前という奴は………」
旺牙がイラッとしたのがわかった。
「あー!うん!わかった!明日はしない!!うん!」
「本当だろうな……」
「ほんと!ほんと!!」
いや、ほんとはよくわかってないけど。
また聞いたら怒りそうだし。
「じゃあな!おやすみ!風呂入れよー!」
これが日常だ。
この他愛も無い会話が意外にも楽しい。
結果、また私は旺牙を怒らせてばかりなんだけど。
それでも、こいつは……いい奴だ。
fin.
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