刺激される感情
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なぜ……と聞かれても答えることは出来ない。
だがなぜかオイラはあそこで“怒り”というものが出てしまった……。
彼女が倶東国に行った美朱を追いかけると言った時から嫌な予感はしていた。
ただ下手に断って厄介なことになるのも御免だ、と願われればその都度、彼女の願いを聞き入れてきた。
深く関わる前にさっさと終わらせよう。
そう思っていたのにどんどん悪い方へと進んだ。
倶東国についたと思えば、美朱は堂々と関所を通ろうとしているし、何かに気づいた奏多は止める間もなく駆け出した。
案の定、連れて行かれた。
「……ハァ………面倒なことになったのだ………」
ついボヤキが口に出た。
彼女らのすぐ脇で、これまた無理に通ろうとする鬼宿を引きずって物陰に隠れた。
「何すんだよ井宿!美朱だけじゃねェ!奏多もいた!連れてかれた!!」
「知ってるのだ。どうやら倶東の皇帝に引きあわされるらしいのだ」
「なっ……」
「オイラ達も美朱ちゃんの後をつけてたのだ。奏多が出ていったのは想定外だったのだ」
「………くそっ」
鬼宿が歯痒さを地面を叩きつけることで発散させる。ここまで気持ちを思うままに出せるというのも、オイラには眩しく映った。
「まっこうから行っては危ないのだ。オイラにまかせるのだ」
そう言うと鬼宿はぐっと思いとどまった。
だけど正直どうすればいいか、オイラは思いあぐねていた。
そして、現実はもっと……厳しかった。
「……ッ……イタッ……!」
君の長い髪が遠慮もないままに掴み上げられる。
鬼宿はその姿を見て、忌々しそうに心宿を睨んでいる。それなのに……自分は今、何をしているのだ。
つきつけられた現実に、奥歯を噛み締める。
目の前に現れた心宿という男の放つ“気”に、臆する自分がいた……。
力の差がありすぎる。
彼の七星としての能力は、ずば抜けているようだった。オイラとは違い、幼い頃にその能力を解放し、使いこなしてきたのだろう。
オイラの心を見透かされたように、心宿に術を使ってもすぐに解かれた。その反撃がすぐさま自分に襲いかかる。
「だっ!」
衝撃波で体が吹っ飛んだ。
「………」
食らった箇所を手で擦る。
……オイラ達はとんでもないものを相手にしているのだ。そう思うと、一度体がぶるりと震えた。
体制を整え、鬼宿と奏多とは別に動く。
気を集中すれば鬼宿が奏多と離れるのがわかった。
どこか身を潜める場所があったのかもしれない。それならそれで動きやすかった。
鬼宿を見つけるとちょうど美朱が部屋に入ろうとし、それを追いかける鬼宿が目に入った。
まずい。そこは……何か良くない気がする。
思った途端、扉が閉まった。
「しまったのだ!!」
「井宿!……ダジャレか?」
………どれだけ緊迫感のない男なのだ。返答する気にもならない。
この状況、まさに絶体絶命に近いというのに。
鬼宿が扉に触れることが出来ないと悟った時、奏多の声が聞こえた。
「鬼宿!井宿!!」
なぜここにいる?しかもその出で立ちはなんだ?
先程まで着ていたものもは違う。全身青の基調。
その生地も紅南国で作られているものとは違う。
すなわち……この倶東国のもの、と言うことだ。
奏多が盗んだのか?……まさか。そんなことをするとは思えない。
ならば、誰かからもらった?一体……誰に……。
誰と会った?